- 環境配慮・SDGsに取り組みやすい方法を探している方
- 企業のCSRご担当者
- 森林認証について知りたい方
- 再生紙以外に環境配慮型素材の選択肢を探している方
世界の森林は今も破壊され続けています。
森林破壊は、気候変動・野生生物・森林に生活を依存する人々に影響をおよぼしています。
この事実は、日本の森林面積は約2500万ヘクタールで国土の67%(3分の2)が森林という、緑豊かな地に暮らす私たちにとっても、決して無関係ではありません。
私たちが暮らす日本国内の木材自給率は4割程度*、使用する木材の多くは輸入に頼っているからです。
森林の問題を解決するためには森林を適切に管理し、適切な森林から産出された木材を購入することが必要です。
*出典:林野庁ホームページ「[令和2年木材需給表]の公表について」
本記事では、それを実現するための「森林認証制度」や「FSCⓇ認証」について説明します。
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森林認証とは
森林認証を簡単に説明
まずはじめに森林認証制度について説明します。
森林認証とは、木材が適切に管理された森林から産出されたものであることを証明し、消費者の選択的な購入を通じ持続可能な森林経営を支援する仕組みのことです。
また、第三者の認証機関が「森林が適切に管理されているか」、および「適切に管理された森林で生産された原材料を使用しているか」について、評価・認証する制度を森林認証制度と言います。
なぜ森林認証が必要なのか
森林認証制度ができた経緯
従来から森林は環境保全と経済社会発展の観点で重要であると認識されていました。しかし、世界では森林の減少や劣化の進行が止まらないという状況にありました。
そのような中、1992年「環境と開発に関する国際連合会議」(略称:UNCED)が開催されました。この会議は一般的には地球サミットと呼ばれ、当時の国連加盟国のほぼすべてにあたる約180カ国が参加、100カ国余の元首または首相が出席するという、かつてないほどの大規模な会議でした。
この会議では、森林に関する初の世界的合意「森林原則声明」と、持続可能な開発に向けた実施計画「アジェンダ21」が採択されました。
「森林原則声明」は、森林に関する持続可能な経営の実現に向け、国際的に取り組むべきことなど15項目からなる世界的合意ではありましたが、法的拘束力のないものとなってしまいました。
しかしこれが、森林保全や持続可能な森林資源の利用などについてさらに関心や意識が高まるきっかけとなり、その結果、国際的な森林認証制度の必要性が叫ばれるようになっていきました。
日本も決して無関係ではない
実は、日本で使用される木材の6割は輸入に依存しています。
また、建材・紙(パルプ)・タイヤ(天然ゴム)・スナック菓子(パーム油)など、日本で生産されるさまざまな製品の原料が森林資源に由来しています。
これは、なにもしなければ私たちが生産または消費する製品のなかに、森林、野生生物、人権に影響を及ぼすような伐採をされた木材が含まれてしまう可能性があることを意味します。
このようなことが起こらないように、政府や国際機関、民間非営利セクターだけでなく、市民、企業の自発的な協力が必要とされています。
[参考:世界の違法な伐採]
引用:外務省ホームページ「違法伐採問題」(2022年10月3日に引用として利用)
違法伐採の現状に関し,2015年6月のG8エルマウ・サミットでは,主要熱帯木材生産国で生産される木材の50%~90%が違法伐採によるもので,世界全体でも,15%~30%が違法伐採であるとの推計(2012年)を報告している。
森林認証、2つの制度
FM認証とCoC認証
森林認証には、森林から産出された木材が消費者のもとに製品として届くまでを管理し、不適格な製品が混ざってしまわないようにするために2つの認証制度が設けられています。
- FM認証(Forest-Management=森林管理)
- 森林が適切に管理されているか認証する制度
- 主に林業関係者のための仕組み
- CoC認証(Chain-of-Custody=製造・加工、流通過程の管理)
- 適切に管理された森林(FM認証された森林)で生産された原材料を使用しているかを証明する制度
- 主に紙製品・木材製品の製造・加工・流通に関わる業者のための仕組み
また、森林の認証制度にはいくつかの種類がありますが、世界規模で活動しもっとも有名な認証制度が「FSC認証」です。
次にFSC認証について説明します。
FSC認証とは
FSC (Forest Stewardship Council®:森林管理協議会)は、責任ある森林管理を世界に広めることを目的とする国際的な非営利団体です。
FSCは、世界で森林資源が失われ、環境・社会・経済に深刻な影響をもたらすことが危惧されるなか、適切に管理された木材とその製品を確実に消費者に届けることで、森林資源の保全を消費者が支えることができる仕組みをつくっています。
FSC認証は、森林減少など世界の森林が抱える問題や市民の環境意識の高まりを背景として、1994年に設立された国際的な森林認証制度です。
世界中の様々な利害関係者の合意により定められた、環境・社会・経済のバランスのとれた10の原則、70の基準に基づき独立した第三者機関が厳正な審査を行っています。
[FSC森林管理の10原則 (FSC-STD-01-001第5版)]
引用:FSCホームページ「FM認証(FM国内規格策定)」
1. 法律の順守:森林管理や取引に関する国内法や国際条約が守られているか?
2. 労働者の権利と労働環境:労働者の権利や安全は守られているか?
3. 先住民の権利:先住民の権利は侵害されていないか?
4. 地域社会との関係:地域社会と連携し、よい関係を築いているか?
5. 森林のもたらす便益:森林の多面的な機能が考慮されているか?
6. 環境価値と環境への影響:環境への影響は評価され、環境が守られているか?
7. 管理計画:きちんとしたデータや情報に基づく計画がされているか?
8. モニタリングと評価:環境や社会への影響がモニタリングされ、負の影響が抑えられているか?
9. 高い保護価値:森林の生態的、社会的に高い保護価値は守られているか?
10.管理活動の実施:管理活動は計画通りに行われているか?
FSC認証の取得にあたっては、要求事項をすべて満たす(規格に適合する)必要があります。
認証取得のための審査では、事務所はもちろん工場や倉庫への訪問、管理体制・手順・理解度の確認などが行われます。そして取得したあとも、年次監査や5年毎の更新審査が行われ、常に要求を満たした状態を維持しなければなりません。
また、FSCは世界で最も多く木材認証を発行しており、WWF(世界自然保護基金)においては、森林認証制度のなかでFSCをもっとも支持すると発表しています*。
*出典:FSCホームページ「FSCが選ばれる10の理由」
身近なFSC認証製品
FSC認証製品には次のようなものがあります。
- パルプ・紙製品
パンフレットなどの印刷物、百貨店などのショッピングバッグ(紙袋)、食品パッケージ、トイレットペーパー、児童書、ノート、はがきなど - 木材製品・非木材林産物
家具、建材、爪楊枝、竹製品など
このようにFSC認証製品は紙や木材製品を中心に、私たちの生活に普及してきています。その中でも印刷物や商品のパッケージ、ショッピングバッグなどの紙製品はもっとも身近な存在ではないでしょうか。
FSC認証とSDGs
FSC認証が貢献するSDGs目標
FSCは、企業が国連の持続可能な開発目標(SDGs)に貢献することは大きな目標であるとしており、2017年、責任ある林産物調達を公約する国内外の企業が57社参加する共同宣言、「持続可能な開発目標(SDGs)とFSC認証に関するバンクーバー宣言」を発表しました。
FSCは、SDGs17の目標のうち「目標15:陸の豊かさも守ろう」を中心に、14の目標の達成に貢献します。
目標1:貧困をなくそう、目標2:飢餓をゼロに、目標3:すべての人に健康と福祉を、目標4:質の高い教育をみんなに、目標5:ジェンダー平等を実現しよう 目標6:安全な水とトイレを世界中に、目標7:エネルギーをみんなに。そしてクリーンに、目標8:働きがいも経済成長も、目標12:つくる責任、つかう責任、目標13:気候変動に具体的な対策を、目標14:海の豊かさを守ろう、目標15:陸の豊かさも守ろう、目標16:平和と公正をすべての人に、目標17:パートナーシップで目標を達成しよう
FSC認証のメリット
[事業者]FSCラベルを表示し、企業コミュニケーションに活用
FSC認証製品を使用することで、環境への配慮やCSR活動、SDGsへの取り組みに貢献することができます。そして何より、森林破壊に加担するリスクを減らすことができることがメリットとして挙げられます。
また、FSC認証製品にはFSCラベル(FSC認証製品であることを示すロゴ)を表示することができます。
FSCラベルを表示することで「FSC認証の環境に配慮した製品である」ことを視覚的に伝えられるようになります。
たとえば、会社案内やCSR報告書、製品パンフレットなどの印刷用紙にFSC認証紙を使用しFSCラベルを表示すれば、その企業の森林問題や環境に配慮する姿勢、取り組みをアピールすることができます。
コミュニケーションツールにFSC認証製品を活用することは、エンドユーザーに事業者としての環境配慮に対する姿勢を表す方法のひとつとなるのです。
▶ FSC認証製品をつくるメリット
- 環境配慮への取り組み、CSR活動の一環
- SDGsに貢献できる
- 知らないうちに環境破壊に加担するリスクを減らすことができる
- 環境に配慮する姿勢やCSRへの取り組みを表現しブランディングに活用
- 他社製品との差別化が図れる
[消費者]FSCラベルの付いた製品を選択-エシカル消費
みなさんは、「エシカル消費」をご存じでしょうか。
エシカル消費とは、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動のことです。
昨今では、商品やサービスを選択する際に社会課題を考慮したものを選ぶなどの意識と行動が求められています。
フェアトレード*商品を選ぶ、地元でつくられたものを購入する、環境に配慮した商品を選ぶなど、一人ひとりが意識と行動を変えエシカル消費を進めていくことは、社会を変える力になります。
そして、FSC認証製品を選ぶこともエシカル消費につながる行動です。
みなさんも、消費者として今できることとして、FSCラベルを目印に製品を選んでみてはいかがでしょうか。
*フェアトレード:先進国と開発途上国間の貿易において、不当に低い価格で取引を行う・長時間労働を強制する・劣悪な環境で働かせるなど、開発途上国に不利な条件での貿易(不公正な貿易)をなくす取り組みのこと
FSCラベルのついた印刷物を作成する方法
FSCラベルのついた製品を製造するには、認証機関による審査に通り認証取得者として正式に登録されていなければなりません。
印刷物についても同様で、どの印刷会社でも自由にFSC認証の印刷物を作れるわけではありません。
FSCラベルの付いた印刷物を作る際は、FSC(CoC)認証を受けた印刷会社で印刷する必要があります。
FSC認証紙を使用しFSCラベルを付けて印刷したい場合は、CoC認証を受けた印刷会社に依頼しましょう。
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▶印刷物で実現可能-環境配慮・SDGsに貢献する方法3選
グリーン購入法とFSC認証紙
グリーン購入法の基本方針では、特に重点的に調達を推進すべき環境物品等を「特定調達品目」に定めていますが、「紙」はグリーン購入法の特定調達品目に含まれています。現在は国や地方公共団体において再生紙だけでなく代替品の使用が認められています。例えば、東京都のグリーン購入ガイドでは代替品について次のように記述されています。
バージンパルプが原料として使用される場合にあっては、FSC認証若しくはPEFC(SGECを含む。)認証を受けたもの又は間伐材等パルプであるなど、サプライチェーンにおいて生物多様性の損失を引き起こさない持続可能な生産がされたものであることが十分に確認されていること。
出典:東京都グリーン購入ガイド(水準2)2023年4月改定(東京都環境局公式サイト)
また、グリーン購入法適合品の印刷用紙が市場に十分に供給されていないという状況を鑑み、2023年12月には環境省は、「グリーン購入基本方針の変更について閣議決定され、新しい判断基準等に変更となった」という文書を国・地方公共団体等に発出しました。
参考:環境物品等の調達の推進に関する基本方針(環境省ホームページ)
まとめ
- 森林認証は森林そのものだけでなく、生物多様性や、そこに暮らす人・働く人の権利を守り、経済的に持続可能な森林管理を広めるための仕組みです
- FSC認証は、適切に管理された認証林やその他責任をもって調達された原材料で作られた製品に認証ラベルを付けて消費者に届けることができます
- FSCラベルを付けることで、事業者はビジネスに活用しながらSDGsに貢献でき、消費者はエシカル消費を進めることができます
- FSC認証紙を使った印刷物を作るには、FSC(CoC)認証を受けた印刷会社で印刷する必要があります
当社がお役立に立てること
ゼンリンプリンテックスは、FSC認証を取得しています!
印刷物にFSCラベルを表示する、認証機関への承認手続きはすべて当社が行います。
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このお役立ち記事は、私がこれまでにお客様のプロモーション課題に取り組んできた経験や、お客様からお寄せいただいた質問をもとに執筆しています。印刷をデザインやマーケティングの観点も交えながら、読者の方に少しでも分かりやすくお伝えする事を心掛けています。