なぜデザインにはマーケティングが必要なのか-それぞれの役割と関係を解説

デザインとマーケティングの関係-伝わるデザイン
この記事は次のような方におすすめします
  • デザインを発注する担当の方
  • デザインの事を知りたい方
  • はじめて印刷物のデザインを発注する方
  • 広報・販促・宣伝の担当者

マーケティングは思っているよりも身近な存在で、デザインは思っているほど直感的ではありません。
本記事は、このマーケティングとデザインに焦点を当て、これらの関係についてまとめました。
プロモーションツール作成を検討する際や、印刷物やWEBサイトなどのデザインを依頼する際、知っておくと役立つ情報ですので参考にして下さい。

「マーケティング」と「デザイン」は無関係ではない

「マーケティングを学んでも役に立たないよね」
「そうそう、マーケティングは言葉だけ。実用性は感じない」

あなたはこのような会話を耳にした事はありませんか?

ひと昔前までは、マーケティングに対してこのような考えを持つ人は少なくありませんでした。
実際、制作会社・印刷会社のデザイナーや営業担当者の中にもこのような方がいましたが、さすがに今では見かける事は少なくなりました。

このような人が減った理由のひとつは、世の中の変化に伴いマーケティングがすっかり社会に浸透し、無視できない状況となっているからです。
そして何より、デザインや印刷物の制作に携わっていく中で、マーケティングとデザインの関係やその有用性に気付いたからだと考えられます。

私の経験では、マーケティングまたはデザインの考え方やその関係性をまったく理解していない、考えてもいない人は、見た目だけにこだわってデザインを作り、それっぽい事をそれらしく説明している事が多いようです。

デザインの役割とは?

「デザイン」に関するよくある間違い

あなたは「デザイン」という言葉から何を連想しますか?

“見た目”、“センス”、“美術的な表現”などといった事をイメージする方も多いのではないでしょうか。
確かに印刷物やWEBサイトなどにとって、デザインは伝えたい事をビジュアルで表現するもので、印象そのものを左右する大切な要素のひとつです。
しかし、デザインは決してそれだけで判断されるべきものではありません。

間違い①:デザインを芸術(アート)作品と混同してしまう

芸術作品は一般的に、「制作者の創造的で自由な表現であり、その解釈を見る者に委ねつつ、感情を動かすもの」などと捉えられます。

それに対してデザインは、ある目的の達成や課題解決のために色・形・見せ方等の標準化されたルールやテクニックを用い、ビジュアルを通して印象を操作し、言葉で伝わりにくいもの・伝えられない情報をわかりやすく伝えるために作られます。
つまりデザインは、情報をわかりやすく伝えるための「手段」であり、目的ではないのです。

間違い②:デザインは見た目が一番。制作者や関係者の好み・価値観で作ってしまう

見た目の好みは人それぞれです。
デザインにおいても、ある人はA案が良いと言い、別の人はB案が良いと言うような事が多々あります。
しかし、〇〇さんはセンスがあるから…という理由だけで、その人が選んだ案に決めるのはどうでしょうか。
デザインは、誰に何を伝えたいか、伝えるためにはどうすれば良いか、読み手はどのように感じるかなど、ターゲットユーザーを主体に検討するべきです。

担当より

このようにデザインに対する認識のよくある勘違いを2つ挙げてみましたが、
あなたはどのように感じましたか?
実は私もこの仕事をはじめるまではデザインについて同じような勘違いをしていました。
これを機に、デザインは目的を達成する「手段」であって、見た目の美しさを整える事だけが「目的」ではないという事を、念頭に置いていただければと思います。

Aside|サッカーの「デザインされたプレー」とは?

先日、なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)の国際試合をテレビで観戦していたときのことです。
後半、なでしこジャパンは流れるようなパスワークで相手ゴールに迫ります。
その時、解説者はこの一連のプレーを「デザインされたプレー」という言葉で評価しました。なぜ解説者はそのような言葉を使ったのでしょうか。
単にパス回しの美しさを「デザイン」という言葉で表現したわけではないはずです。

ここでの「デザイン」とは、試合の中で狙い通りの結果を目指す戦術として、意図的に実行することを指しています。
セットプレーやビルドアップ、相手へのプレスからから繰り広げられる攻撃など、それぞれの局面での意図的なプレーが、絶妙な瞬間に結実しゴールに迫った結果、それは「美しいプレー」として賞賛されることもあります。
しかし、単にプレーが美しいからといって「デザインされたプレー」と表現されるわけではないでしょう。

マーケティングの役割とは?

それでは続いて、マーケティングについて見ていきましょう。

「マーケティング」の目的

プロモーションにおけるマーケティングの目的は「顧客のニーズを見極めて、製品やサービス・価値を提供し、顧客を満足させること」です。

そのためには、コミュニケーションを通じて企業やブランドの認知度を高める、製品やサービスの魅力をアピールする、顧客とのつながりを深める、顧客の意識や行動に影響を与える、顧客の問題解決やニーズに対する満足を促進するなど、顧客との関係を構築する事が重要とされています。

マーケティングのコミュニケーションで大切な事とは

マーケティングにおけるコミュニケーションは、広告・PR(パブリック・リレーションズ)・販売促進・人的な販売活動などを組み合わせて行われます。
その際に重要な事として、次の2つがあります。

▶PR(パブリック・リレーションズ)の説明はこちら
PRとプロモーションの違いとは|マーケティング視点でわかりやすく説明

▶ターゲットユーザーを明確にして、よく知ること

誰に、またはどの市場に向けて情報やメッセージを発信するのかを明確にする必要があります。
ターゲットユーザーによって、伝えるメッセージや伝える方法が変わるため、それを明らかにして深く知る事は、プロモーションの無駄を防ぎ、プロモーション効果を高める事につながります。

▶他の製品・サービスとの差別化を図り、強みをアピールすること

他の製品・サービスとの差別化を図り、自社の強みをアピールする事は、マーケティングにおいて必要不可欠な要素の一つです。
例えば、製品やサービスの品質を強みとし、他の製品・サービスとの違いを強調した広告を展開することで、競合優位性の確立、購買意欲の増大、顧客ロイヤルティの向上などの効果が望めます。

担当より

ここでは基本的なものを2つ例として挙げました。

「こんなの当たり前」と思っていても、実際のプロモーションになると、おざなりになっている場合があります。効果的なプロモーションを考える際には、いま一度立ち返りたいものです。

デザインとマーケティングの関係とは?

ここまでにデザインとマーケティング、それぞれについて簡単に説明してきました。
では、デザインとマーケティングはどのように関係しているのでしょうか。

デザインとマーケティングは密接に関連している

印刷物などのプロモーションツールは、ビジネスにおいて、商品の販売や企業のブランディングなどで大きな役割を果たす重要なものです。
そしてそれらの効果を最大限に引き出すための要素のひとつがデザインです。

前述のとおりデザインは、ターゲットユーザーに対しメッセージを伝える事が役割のひとつです。
デザインを制作する時に、ターゲットユーザー(またはターゲット層)は誰なのか、どんなメッセージを伝えるべきかを考えていないとどうなるでしょうか。

マーケティングがデザインの先に立ち、しっかりと戦略を立てていなければならないという事です。
翻って、マーケティング戦略が優れていても、その戦略を伝えるデザインが魅力的でなければ、ターゲットユーザーにアピールする事は出来ません。

このように、デザインとマーケティングは互いに関連し合っています。
そのため、印刷物などのデザインを作成する際には、決してどちらか一方ではなく、マーケティング戦略をしっかりと考慮し、ターゲットユーザーに適切なメッセージを伝えるデザインを作成する事が必要です。

【事例】チラシデザインにマーケティング視点を取り入れる

効果的なチラシデザインの多くは、ターゲットに行動を促す導線として機能しています。つまり、チラシを見たターゲットが「次に何をすべきか」を直感的に理解できるようになっているのです。どのような行動に結びつくべきかを意識し、視覚的に誘導を設計することで、単なる情報提供にとどまらず行動促進につなげています。

WEBマーケティングでは、問い合わせや資料請求、商品購入、会員登録といった行動を促すことが求められます。これらの行動は「コンバージョン(CV)」と呼ばれ、WEBマーケティングにおける重要な成果指標のひとつです。そのため、ページのデザインや内容、CTA(コール・トゥ・アクション)ボタンの配置などは、すべてコンバージョンを達成しやすくするように設計されます。

チラシも同様に、ターゲットに行動を促すための設計が重要です。デザインは単なる「見栄え」を整えるものではなく、ターゲットに行動を起こさせるための戦略的なツールとして機能し、大切な役割を担っています。

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【チラシ改善例】
効果的なチラシデザインの改善方法をビフォーアフターで解説

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まとめ

今回述べた事は、よく考えると当たり前だと思われる方が多いかと思います。
しかし、実際のデザインの現場では、見た目や個人の好みで判断される事がよくあります。
またデザイナーの中には、依頼者の好みに合せる事はある意味でニーズを満たしていると言う人もいますが、はたしてそれで、課題解決や目的を達成のためにデザインを作ったと言えるのでしょうか。
印刷物を目にする人、手にして欲しい人は誰なのでしょうか。

デザインは、商品やサービスを魅力的に見せる事ができるため、マーケティングにおいて非常に重要な役割を果たします。
他方マーケティングは、商品やサービスを売り出すための戦略を策定する事ができますが、それを効果的に訴求するためにデザインを必要とします。
マーケティングとデザインは顧客のニーズを満たすために相互補完の関係にあると考えると良いと思います。

デザインや印刷物を作成する際は、このような事を共に考え、目標達成や課題解決に向けて伴走してくれる信頼のおけるパートナーが必要です。

担当より

マーケティングは意外と身近にあるもので、デザインは芸術作品ではありません。
マーケティングを考慮したデザインは、「顧客志向のデザイン」や「ニーズに合ったデザイン」と言い換えるとよりイメージしやすいのではないでしょうか。
この記事があなたのお役に立ち、少しでも目標達成に近づけば嬉しく思います。

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この記事を書いた人

このお役立ち記事は、私がこれまでにお客様のプロモーション課題に取り組んできた経験や、お客様からお寄せいただいた質問をもとに執筆しています。印刷をデザインやマーケティングの観点も交えながら、読者の方に少しでも分かりやすくお伝えする事を心掛けています。