採用パンフレット制作にマーケティング視点が必要な理由|配って終わりにしないプロセスとは

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採用パンフレットを制作したのに、応募が増えない。
説明会で配布しても、その後のエントリーにつながらない。
その原因は、デザインや内容の問題ではないかもしれません。

本記事では、採用パンフレットにマーケティングの視点を取り入れ、配って終わりにしないための考え方を説明します。

※本記事の「採用パンフレット」には、採用を目的としたリーフレット等も含んでいます。

なぜ採用パンフレットに
マーケティング視点が必要なのか

採用活動を行う多くの企業では、採用パンフレットを「必要な印刷物」として扱います。
その理由は、次のようなものです。

  • 毎年つくっているから
  • 競合もつくっているから
  • 説明会で配る資料が必要だから

このような発想のもとで採用パンフレットを制作した場合、“配って終わるツール”になってしまいかねません。
なぜなら、誰に、どの段階で、何を伝えるためのパンフレットなのかが整理されていないからです。

このような状況で「より良いパンフレットにしよう」と意気込んでみても、根拠が曖昧なままデザインを改善しようとしたり、情報を増やしたりする方向に向かい、結果、求職者や就活生が本当に知りたい情報からはズレてしまうでしょう。

採用活動を偶然の出会いに頼るのではなく、仕組みや設計によって体系的に成果につなげる取り組み。その礎となるのが、採用マーケティングです。

この視点をパンフレット制作にも取り入れることで、誰に、どの段階で、何を伝えるのかが体系的に整理されたパンフレットへと変えることができます。

採用マーケティングとは何か

マーケティングという言葉を聞くと、広告や集客施策を思い浮かべるかもしれません。
しかし本来のマーケティングは、単なる手法の話ではありません。

一般的なマーケティングでは、顧客のニーズを理解し、顧客にとってのベネフィットを価値として定義し、それを適切な方法の組み合わせ、いわゆる4P(Product・Price・Place・Promotion)で設計します。
誰にどんな価値を、どのような接点でどう伝えるかを総合的に組み立てます。

採用マーケティングもこれと同様に、求職者のニーズを理解し、自社で働くことの価値を定義し、どのようなプロセスで出会い、どのように志望へとつなげるのかを組み立てていきます。
採用マーケティングでは、次の要素を整理しながら、採用活動全体を俯瞰します。

  • WHO:誰に届けるのか(ターゲット)
  • WHAT:何を価値として伝えるのか
  • HOW:どのように届けるのか(施策・手段)
  • WHEN:どのタイミング・順番で動かすのか
  • KPI:どの数値を管理し、改善するのか

重要なのは、採用活動を施策の集合として捉えないことです。
採用ナビサイトへの掲載、説明会の実施、SNS発信、採用パンフレットなどが、脈絡なく存在していては、十分な成果につながりません。

採用マーケティングと採用広報の関係

採用活動という大きな枠組みの中で、採用マーケティングは「戦略(全体設計)」、採用広報は「コミュニケーション(価値を伝える活動)」という役割を担います。

採用広報は、企業の広報活動の中で、求める人材獲得に向けて自社の魅力や価値観を伝える活動です。求職者と企業の継続的なコミュニケーションを担うものと言えます。
一方、採用マーケティングは、前述のとおり、その発信も含めて「誰に何をどの順番で届け、どう応募・入社につなげるか」を設計し、改善する考え方です。

近年では、採用活動を担う人事部門と、企業コミュニケーションを担う広報部門が連携して採用広報に取り組むケースが増えています。その際に重要なのは、採用マーケティングを共通の戦略軸(全体のものさし)として捉えることです。

採用パンフレットの役割を整理する

採用パンフレットは段階を前に進めるためのツール

採用パンフレットは、採用活動を前に進めるためのツールです。
就職ナビ、採用サイト、SNS、説明会、面接など複数の接点がある中で、パンフレットも「どのフェーズで、何を後押しするのか」が決まってはじめて意味を持ちます。
この前提がないまま制作すると、どれだけ見ばえが良くても「きれいな資料」というだけで終わってしまいます。

フェーズのどこでどのような役割を担わせるか

「認知 → 興味・情報収集 → 比較・検討 → 志望・応募 → 選考 → 内定」という流れの中で、採用パンフレットはどこで機能させるかということを明確にしておくことで、認知拡大、理解深化、志望度向上などの役割を担わせることができます。
この位置づけを明確にせず、すべてのフェーズを1冊で担おうとすると、情報が散漫になり、結果として刺さらないパンフレットになるかもしれません。
フェーズ別の役割設計については、別記事でも詳しく解説しています。

採用ピッチ資料

ここまで述べてきたとおり、重要なのは“パンフレットをつくること”ではなく、採用活動全体の中で最適な役割を担うことです。
そのため、場合によっては印刷物としてのパンフレットではなく、説明会やカジュアル面談で使用する採用プレゼン資料(いわゆる採用ピッチ資料)という形式の方が適していることもあります。

実践:採用マーケティング設計プロセス

次に、採用パンフレットを配って終わりにさせないためのプロセスについて説明します。
採用パンフレット制作にマーケティングの視点を取り入れ、採用活動を単なる施策の集合として捉えるのではなく、誰にどのような価値を届けるのかを起点に、採用活動全体を戦略的に組み立て、実行および継続的に改善していくための方法です。

1.採用の課題を明確にする

最初にやるべきことは、採用プロセスの「どこが詰まっているか」を数値と事実で特定することです。

採用パンフレットを作る前に、まず採用活動のボトルネックを把握します。
例えば次のような点です。

  • 応募数が不足しているのか
  • 説明会 → 応募の転換率が低いのか
  • 面接辞退・内定辞退が多いのか
  • 入社後のミスマッチは多くないか

課題が違えば、必要な打ち手も、パンフレットの役割も変わります。逆に言えば、ここを曖昧にしたまま制作に入ると、改善の方向がブレてしまいます。

2.自社の価値を再定義する

次に行うのは、「自社で働くことの価値」を求職者の目線で言語化し直すことです。

ここで言う価値は、理念や事業内容をきれいに説明することではありません。
求職者が意思決定で知りたいのは、次のようなことです。

  • ここで働くと、どんな経験ができてスキルが得られるのか
  • 何を期待され、どんな成長が求められるのか
  • どんな環境で働くのか
  • 仕事にはどんな難しさがあり、どんなやりがいがあるのか
  • どのような毎日が待っているのか

この価値は、会社が言いたい言葉を並べても伝わりません。
現場のリアルや、実際の働き方・評価・育成の仕組みと矛盾しない形で、具体的に落とし込む必要があります。
例えば、求職者、自社、採用における競合の三つの視点で整理してみると、自社の立ち位置や独自性がより明確になります。
いわゆるマーケティング3Cの考え方です。

3.採用ターゲットを具体化する

マーケティングの観点からすると、ターゲットは「広げる」「万人受け」を狙うのではなく、人物像に優先順位をつけ、それを言葉にできる状態にする必要があります。

「誰に来てほしいのか」を曖昧にしたまま、間口を広げすぎるのは避けるべきです。
「誰でもいい」「この層も捨てがたい」と対象を増やすほど、結果として、伝えたいメッセージは誰にも届かないという状況に陥ります。

また、求職者に合わせて自社の価値やメッセージを変えてしまうことがあります。
しかし、それは本質的な解決にはなりません。
大切なのは、自社が提供できる価値と、求職者が重視する価値観の「重なる部分」を見つけることです。
重なりが小さいまま進めると、入社後のミスマッチにつながる可能性があります。

この重なりを見つけるために、ターゲット像をできる限り具体化していきます。
そこで役立つのが、ペルソナやN1の視点です。

  • ペルソナ:ターゲットを代表する人物像を、仮説として具体化するもの
  • N1:実在するひとり(n=1)の行動や意思決定、価値観などを深く理解する視点

ペルソナとN1の違い

ペルソナは、ターゲットを代表する人物像を仮説として、年齢、志向、価値観、行動傾向などを具体化することで、「誰に向けた採用活動なのか」を明確にします。
一方、N1は実在するひとりの行動や意思決定を深く理解しようとするものです。なぜその人は応募したのか、なぜ内定を承諾したのか。ひとりの意思決定プロセスを掘り下げていきます。

ペルソナ・N1活用の例

例えば、新入社員Aさんを掘り下げてみると、
「入社理由は給与や福利厚生などの待遇と思っていたが、実は最終的に背中を押したのは、成長できる環境だとわかった」
というような、平均値や想像だけでは見えないリアル姿に気付くことがあります。

  1. N1: 自社の若手社員や内定承諾者を対象に、「なぜ応募したのか」「なぜ入社を決めたのか」「何に迷ったのか」といった事実を丁寧に聞き出す
  2. ペルソナ: N1で得られた具体的な意思決定の要素を整理し、ターゲット像として言語化します。単なる属性ではなく、「どんな価値観で動く人なのか」などなるべく具体的に落とし込む
  3. 検証: 作成したパンフレットの構成案やコピーを、ターゲットに近い属性の人に見せ、理解できるか、共感できるか、感情が動くかを確認する

このように、N1で実際の意思決定の背景を掘り下げ、そこからペルソナとして整理・言語化し、さらに仮説を検証していくことで、ターゲット像は抽象的な理想ではなく、「動くひとり」に近づいていきます。

項目ペルソナN1
主な役割方向性の決定インサイト(本音)の発見
目的制作上の認識のズレをなくす意思決定の「トリガー」を特定する
注意点都合の良い「架空の人」になる特殊または平均に引きずられる

4.カスタマージャーニーを整理する

ターゲットが具体化できたら、次に考えるのは「その人はどのようなプロセスで応募・入社に至るのか」を可視化することです。

カスタマージャーニーは、一般的なマーケティングでは、顧客が商品やサービスを認知してから購入・利用するまでのプロセスを指します。
採用活動の場合には、求職者が企業を認知してから応募・入社するまでのプロセスとしてキャンディデイトジャーニー(Candidate=候補者)と呼ぶことがあります。

ここでは、求職者が企業を知ってから意思決定に至るまでの流れを整理していきますが、目的は段階を並べることではなく、各段階で「何を感じ、何に迷い、何が決め手になるのか」を明らかにすることです。

例えば、認知→興味・情報収集→比較・検討→志望・応募→選考→内定という流れがあります。
その中で、候補者の視点に立ち、各フェーズでの行動・タッチポイント・感情・疑問・課題などを可視化する地図を作成します。
求職者が何を考え、何に迷い、どんな不安を抱えているのかを想像し、整理するのがポイントです。

例えば、次のような問いや不安に対して、どんな情報をどのように届けるのかを設計していきます。

  • 認知段階では「この会社は何をしているのか」
  • 興味段階では「自分に合うのか」
  • 比較段階では「他社と何が違うのか」
  • 志望段階では「ここに決めて後悔しないか」
キャンディデイトジャーニーの例

5.ツールの役割分担設計

カスタマージャーニー(キャンディデイトジャーニー)に沿って、各フェーズで「どこで接点を持ち」「何を伝え」「何を渡すか」を設計します。ここではじめて、採用パンフレットの役割が明確になります。

採用活動には、就職ナビサイト、採用サイト、SNS、説明会、動画、キャリアセンターなど、さまざまな接点(タッチポイント)があります。しかし、それぞれが同じ役割を担う必要はありません。
重要なのは、「どの段階で」「何を伝えるためのツールなのか」を明確に分けることです。
例えば採用パンフレットでも、配置や渡すタイミングによって役割は変わります。

  • キャリアセンターに設置する場合
    企業を知ってもらい、興味を持ってもらう
  • 会社説明会で渡す場合
    企業理解を深め、他社との違いを整理する
  • インターンシップで渡す場合
    働くイメージを具体化し、不安を払拭する

このように、採用パンフレットは「いつ・どこで使うか」によって担う役割が変わります。だからこそ、採用マーケティング全体の設計の中で位置づけることが重要なのです。

6.コンテンツ企画・制作

ここまでのプロセスを経て、はじめて採用パンフレットの構成やデザイン、掲載内容の方向性が定まります。

ターゲットや役割が明確になっているからこそ、伝えるべき価値の優先順位が決まり、構成・情報量・表現方法まで一貫性を持たせることができます。

また、パンフレットが完成しても、それはゴールではありません。
実際の採用活動において、反応や結果をもとに改善を重ねていくためのスタートであることを忘れないようにします。

NG事例

いきなりデザインからスタート?

採用パンフレットのリニューアルの際に、いきなりデザインのラフ案やビジュアルイメージからスタートする。
もしかすると、このような経験があるかもしれません。
もちろん、デザインは重要です。
しかし、ここまで整理してきたように、採用パンフレットは単なる印刷物ではなく、採用活動全体の中で特定の意思決定を後押しするツールです。
これは、採用活動の課題ではなく、ただ「パンフレットの見た目」だけしか考えていない可能性があります。

例えば、

  • 堅実な企業だから落ち着いたトーンで
  • 成長企業だから勢いを出して
  • 若者向けだからポップに

こうした方向性は一見もっともらしく見えます。
しかし、裏を返せば、多数の企業にもあてはまりそうなことを並べているだけです。
ここまでの話のとおり、いきなりデザインの話をしてくるのは、これらの前提に沿っているのでしょうか。
そうでなければ、ただあなたの会社のコーポレートサイトを見てなんとなくのイメージをそれらしく理由付けしているに過ぎないかもしれません。

それって本当にブランディング?

採用パンフレットの制作では「ブランディングを意識して」などと言われることがあります。

もちろん、採用活動とブランディングは無関係ではありません。
ブランドとは、企業の行動や発信、体験の積み重ねによって、信頼やイメージ、他との違いが形成された“結果”に近いものです。ブランディングとは、その状態をつくるための戦略と継続的な取り組みを指します。
企業の印象や価値観の伝わり方は、長期的にはブランド形成に影響します。
しかし、見た目が整った採用パンフレットを制作したからといって、それだけでブランドが形成されるわけではありません。「ブランディング」という言葉が先行すると、目的が見た目の統一にすり替わってしまうことがあります。
惑わされないためにも、まずはこの記事で述べたとおり、採用課題・自社の価値・ターゲット・ジャーニー・ツールの役割を一つひとつ整理し、採用活動全体において一貫性をつくることが重要です。

よくある質問

Q
採用パンフレットと採用マーケティングは何が違うのですか?
A

採用パンフレットは、採用活動における「ツール」のひとつです。一方、採用マーケティングは、誰に何をどの順番で伝え、どのように応募へつなげるかを設計する「戦略」です。
採用マーケティングという全体設計の中に、採用パンフレットが位置づけられると考えると分かりやすいでしょう。

Q
採用広報と採用マーケティングの違いは何ですか?
A

採用広報は、企業の魅力や価値観を発信する活動です。
一方、採用マーケティングは、その発信を含めた全体設計と改善活動を指します。採用広報が「伝える活動」だとすれば、採用マーケティングは「動かす設計」と言えます。そして採用パンフレットは、その“動かす設計”の中に配置されるツールです。

制作の前に、戦略を

採用パンフレットは、採用活動の一部として機能する「意思決定を後押しするツール」です。
だからこそ、

  • 自社の価値を言語化できているか
  • 誰に来てほしいのか
  • 求職者の意思決定プロセス(ジャーニー)を理解できているか
  • どのフェーズで、何を後押しするツールにするのか

これらを整えて、採用パンフレットの構成・デザイン・掲載内容の方向性を決定すべきです。

近年では、退職者(アルムナイ)との関係構築も重要な接点のひとつとされるなど、採用が多様化しています。
採用パンフレットの制作をご検討中の方も、まずは採用マーケティングの視点から、全体の設計を見直してみてはいかがでしょうか。

ゼンリンプリンテックスでは、パンフレットの制作・印刷に加えて、構成段階からのご相談も承っております。

このようなお客様からもご相談いただいていますので、お気軽にご相談ください。

採用パンフレットの制作・印刷は、ゼンリンプリンテックスにお任せください

社名株式会社ゼンリンプリンテックス
URLhttps://zpx.co.jp/
設立1947年 9月
事業所東京、福岡、熊本
関係会社株式会社ゼンリン、株式会社ゼンリンデータコム、株式会社ジオ技術研究所など
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本記事は、パンフレット制作の経験が豊富なスタッフ、デザイナーのノウハウをもとに執筆しました。