本記事では、ロジカルシンキングについてその概要を分かりやすく説明します。
※ロジカルシンキングには様々な考え方や手法がありますが、本記事は学術的な見地からではなく、ビジネスにおいてのロジカルシンキングの概要について説明します。
ロジカルシンキングとは
「プレゼンがうまくいかない」と感じたこと、「問題の解決方法が見つからない」という経験はありませんか。
このような時に有効なのが「ロジカルシンキング」です。
ロジカルシンキングとは「物事を論理的に考え、体系的に整理して伝える」スキルのことです。
問題解決や意思決定、コミュニケーションなどビジネスシーンで役立ちます。
ロジカルシンキングを身につけると、筋道を立てて矛盾や破綻がないように物事を考え、複雑に絡み合う関係性を整理し、それらを分かりやすく伝えられるようになります。
ロジカルシンキングの基本
「ロジカルシンキング」の基本的な考え方をまとめました。
ロジカルシンキングがどのようなものか、概ねつかむことが出来ると思います。
- 解決すべき課題を明らかにする(何をもって成功とするかを定める)
- 一言でわかる結論、データなどの事実、結論に至った理由を体系的に組み立てる
- 誤った思い込みや偏見に陥らないようにする
- 帰納的な推論(帰納法)と演繹的な推論(演繹法)を使用する
帰納法では、具体的なデータや事例を収集し、パターンやトレンドを見つけ出します。
それらの情報から一般的な原則や法則を導き、問題に対する洞察を得ることができます。
例えば、成約に至った営業案件について、それぞれの顧客情報(業種・商談担当者)や、営業手法(WEB・ダイレクトメール・テレアポ等)を比較すると、「製造業の課長以上からWEB経由の問い合わせは、成約率が高い」という事実がわかれば、今後の戦略が見えてくるのではないでしょうか。
一方、演繹法は、既知の原則や法則から具体的な結論を導く際に使用されます。
与えられた前提条件やルールに基づいて、論理的に結論を導き出します。
空・雨・傘で考えるロジカルシンキング
ロジカルシンキングの解説の中で最も有名なものが、「空・雨・傘」です。
「朝、家を出る時に、傘を持っていくか」を決める時の思考プロセスをもとに、課題に対しその答えを導くフレームワークにしたものです。
- 【課題の定義】
雨に濡れないために、傘を持って外出するか - 【空】事実・現状の把握
空は曇っている - 【雨】解釈
曇っているから雨が降るのではないか - 【傘】解決策・行動
折りたたみ傘を持って外出する
例えばお客様へのプレゼンの場で、いきなり自社サービスの説明をしても相手には届かないでしょう。
そこで「空・雨・傘」を使うとこのようになります。
- 【空】事実・現状の把握
「御社の状況、とりまく市場、競合企業は~のような状況です」 - 【雨】解釈
「この状況から考えますと、このままでは~となってしまう事が考えられます」 - 【傘】解決策・行動
「ですから当社の新サービスをおすすめします。この新サービスは・・・(自社サービスでお客様の課題をどのように解決するかを説明)」
会議で使える「空・雨・傘」
もし会議の場で、事実の報告だけが求められるのであれば「空」(事実・現状)だけを述べれば良いでしょう。
しかし通常は、「空」「雨」「傘」、つまり現状・事実、解釈(分析結果)、それを受けて解決策を説明することが求められるのではないでしょうか。
【注意】
- 「空」から「傘」にとばない(話がとばないようにする)
- 「雨」と「傘」はひとつとは限らない
この2点にはぜひ注意していたきたいと思います。
聞き手にとって納得のいく十分な説明とならない、また誤解を招いてしまう可能性もあるからです。
ロジカルシンキングに役立つ手法・ツール
ロジカルシンキングの際に役立つ手法・ツールがいくつかありますので代表的なものをご紹介します。
MECE(ミーシー)、ロジックツリー、フェルミ推定、ピラミッドストラクチャーが有名ですが、聞いたことがあるのではないでしょうか。
問題の分析や情報の整理に使用。
問題を分割し相互に排他的でかつ完全に網羅的なカテゴリーに分類します。
MECEの原則に基づいて情報を整理することで、情報の重複や欠落を防ぎ、包括的な理解と洞察を得ることができます。
問題解決や意思決定のための論理的な分析に使用されます。
要素とその関係をツリー状の構造で視覚化することで、問題の本質や因果関係を明確に把握しやすくなります。
各要素の詳細な検討やデータの分析を通じて、問題の解決策や意思決定の根拠を導き出します。
問題解決や意思決定において大まかな推定を行う手法です。
問題の複雑さや不確実性が高い場合に、簡単な計算や推測を通じて近似的な答えを導き出します。
概算やおおよその数値を求めるために用いられ、迅速な判断や意思決定に役立ちます。
情報やアイデアを階層的な構造で整理する手法です。
問題解決のプロセスで、情報やデータを整理し、主要な要素をピラミッドのような構造で配置します。情報の整理や洞察の抽出がしやすくなります。
問題解決にロジカルシンキングを活用する
冒頭で述べた通り、ロジカルシンキングは問題解決に大変役に立ちます。
[例]問題解決のためのロジカルシンキングの流れ
- 問題の明確化:問題を具体的に定義し、解決すべき課題や目標を明確にします。問題の本質を理解することは、解決策を見つけるための重要な第一歩です。
- 情報の収集
問題に関連する事実や情報を収集しします。データ、統計、専門知識など、さまざまな情報源から必要な情報を集めます。 - 問題の分析
収集したデータや情報を分析し、相互に関連する要素やパターンを特定します。さらに、それらを評価して優先順位をつけることで、問題解決のための具体的なアクションプランを策定することができます。 - 仮説・解決策の策定
収集した情報や分析結果に基づいて、問題を解決するための仮説を立てて検証します。
妥当性や実行可能性を考慮し、最も効果的な解決策を選択、実行プランを作成します。 - 仮説・解決策の実行
仮説または解決策を実行します。結果に応じて調整や修正を行います。 - 評価
解決策の実行結果を評価し、目標の達成度や効果を検証します。
反省点や改善点を抽出し、次の問題解決に活かします。
仮説でのアプローチ
ビジネスの多くは不確実性を伴います。出来る限り情報収集を行い、仮説に基づいて分析や検証を行うことで確実性が高まります。問題解決においては、しばしば「仮説を立てて分析する」という方法がとられます。
例えば、ある運送会社で「荷物到着の遅延が多発している」という問題について
- 配達ドライバーに問題はないか
- 荷受や商品発送時に問題はないか
- 伝票処理など情報伝達の問題はないか
- 交通状況、天候の影響ではないか
- クレームのお客様に何か共通点があるのではないか
ざっとこのような仮説を考えるのではないでしょうか。
これは、経験や一般的な常識から導かれ、「問題はココにあるのでは?」という思考に至っていますが、これらは思い付きでしかありません。
しかし、このようにあたりを付けてデータを分析(検証)し、客観的に評価をすることで、無駄な分析を避け、効率的に問題解決に近づくことができます。また、データによる理由付けが行われてこそ、その仮説が説得力のあるものになります。
仮説は完璧である必要はない
確かにはじめから仮説が本質をついていれば、早く解決にたどり着けます。
しかしそれにこだわると、どうしても思い入れ思い込みが強くなり、思考が偏りがちになります。
仮説はあくまで仮説と念頭に置いて、発想の幅を狭めないようにしましょう
バイアスに注意する
問題を解決する際に気を付けなければならない事のひとつは、真の原因に気付かない・見逃してしまうということです。
その原因のひとつがバイアスです。
バイアスとは、主観的な意見や傾向に基づいて、客観的な判断や意思決定に影響を与えることを指します。
※一般的には、特定の考え方や立場に偏っていることを指すことが多い
バイアスは、さまざまな要因によって引き起こされます。
個人の経験、信念、社会的な環境、文化的な背景、メディアの報道などがバイアスの形成に関与する要素となり得ます。
売上が落ちてきた原因を探る時に「部下の能力が不足しているからに違いない」「きっと競合会社の影響だ」「やはり市場が縮小しているのだろう」「おそらくお客様のニーズの減少しているのだろう」などと偏った見方に絞って分析を進めてしまうと、当然、本当の問題やその解決策にたどり着くことは難しいでしょう。
その仮説に確信や思い入れがある場合は特に注意が必要です。
※本人がそれに気が付いておらずそのように信じ込んでいる状態を確証バイアスといいます
人間は誰しもバイアスに陥るものです。
バイアスの存在を知りそれを意識することでリスクを回避できます。
バイアスの種類
自分の信念や仮説を支持する情報に注目し、それに反する情報を無視する傾向から生じる思考の偏り
自分に都合の良い情報や評価を過大評価し、都合の悪い情報や評価を過小評価する傾向から生じる思考の偏り
社会的な環境や集団に属することによって生じる思考や判断の偏り
(集団思考・同調圧力・ハロー効果など)
モレなくダブリなく
仮説を立てる際にヌケがあった場合、大事な点を見過ごしてしまい、真の問題解決にたどり着けないかもしれません。
また、ダブリがあると無駄な分析に繋がってしまいます。
前述のように、それを避ける方法として代表的なものにMECE(ミーシー)があります。
しかしありがちなのが、このようなフレームワークを使うとそれが目的になってしまう事です。
あくまでフレームワークはツールであり、本来の目的を見失うことがないようにしなければなりません。
伝えるためのロジカルシンキング
プレゼンテーションや会議の場でロジカルに伝えるためにはいくつかコツがあります。
まず、目的を明確にすること。
自分が何を伝えたいのか、相手に何を理解してもらいたいのかを明確にすることです。
目的が明確でなければ、自分の考えも相手に伝わりません。
目的を明確にするためには、自分の考えを一言でまとめることができるようにしましょう。
次に、根拠や理由を提示すること。
自分の考えや主張に対して、どのような根拠や理由があるのかを示すことです。
根拠や理由がなければ、自分の考えや主張は説得力がありません。
根拠や理由を提示するためには、事実やデータ、専門家の意見などを用いると良いでしょう。
最後に、どのような結論が導かれるのかを示すことです。
結論を導くためには、目的と根拠や理由がつながっていることを確認しましょう。
クリティカルシンキングとは
クリティカルシンキングは、情報やアイデアを客観的に評価し、論理的かつ批判的な思考を用いて分析し、バイアスを避けて、主観的な意見や感情に基づく判断ではなく、根拠や証拠に基づいて意思決定や問題解決を行う方法です。
ロジカルシンキングが情報やデータを分析して正しい結論を導くことを目的とするのに対し、クリティカルシンキングは、合理的な判断や意見を形成することを目的とします。
問題解決のプロセスにおいては、まずロジカルシンキングを用いてデータや情報に基づいた分析や解決策の構築を行い、その後クリティカルシンキングを活用して提案された解決策や意見を評価し検証する、といったように使い分けることがあります。両方のアプローチを組み合わせることで、より効果的な問題解決や意思決定が可能となります。
[参考]ラテラルシンキングとは
ラテラルシンキングは、新たな視点や創造的な解決策を見つけるための思考法です。思考パターンにとらわれないよう、自由な思考を進めるマインドマップやブレーンストーミングなどからアプローチします。論理的な分析や結論を求めるロジカルシンキングとは異なる思考法です。
最後に
ロジカルシンキングは、一見複雑で解決が難しそうな問題も、論理的に分解して考えることで、新たな解決策を見つけ出すための有効な手法です。
ビジネスシーンだけでなく、日常生活での問題解決にも活用できます。
是非、このロジカルシンキングをあなたの業務に取り入れ、より良い結果を得てください。
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