ブランディングに対するよくある誤解
あなたは「ブランディング」と聞いて何を想像しますか。
ロゴマーク、商品や企業のイメージ、知名度の向上…
これらは、ブランディングの要素の一部に過ぎません。
実際、「ブランド」や「ブランディング」といった言葉は抽象的であり、定義や考え方に曖昧な部分があります。
ここで大切なのは、「ブランド」がロゴマークや商品のイメージを意味するだけの言葉ではないということです。
また、「ブランディング」はロゴマークの制作やイメージ広告の展開、知名度向上のための広告宣伝や広報活動だけを指すわけではありません。
例えば、自社の優れた商品やサービスを消費者に伝えるために広告宣伝を行っているA社。
広告宣伝の目的は、自社もしくはその優れている点について認識してもらうことでしょう。
しかしこの活動(=広告宣伝)だけで、「当社はブランディングを行っています」とはなりません。
この場合ブランディングは、相手(消費者)が「この会社、もしくはその商品・サービスは優れている」と感じ、それを相手に言ってもらうようにすることです。
ブランドとは?ブランディングとは?それぞれの意味を確認
それでは、「ブランド」「ブランディング」とはいったい何なのでしょうか。
様々な解釈や考え方が存在しますが、ここで一般的な考えをご紹介します。
「ブランド」の意味
少し振り返ってみてください。
あなたが購入した商品、もしくはそのサービスを選んだ理由は何でしたか?
その商品や企業のイメージ、ストーリー、価値観に惹かれたのかもしれませんね。
「ブランド」とは、製品やサービスを識別し、他と区別するための名称、メッセージ、記号、シンボル、デザイン、またはそれらの組み合わせを意味します。
これらの要素を通じて、消費者やユーザーに特定の価値やイメージを連想させ感情を働かせる役割を持っています。
ただし、伝える側(例: 企業や学校)が持つ価値やイメージが、受け取る側(消費者や受験生)にしっかり伝わるとは限りません。
この双方の価値やイメージのギャップを埋める戦略や取り組みを「ブランディング」と呼びます。
「ブランディング」の意味
「ブランディング」とは、ブランドを築き、成長させるための戦略やプロセス、またはその取り組み全体を指すものです。
このプロセスは、ブランドの価値・アイデンティティ・イメージ・感情などを、伝える側と受け取る側で一致させることを目的とし、その結果として心に印象を残し、独自性、共感、信頼、そして支持を獲得することを目指します。
ロゴなどの視覚的要素もブランドにとって重要ですが、広告、マーケティング、デザイン、顧客体験などは、ブランディングの多様な要素の一部にすぎません。
ブランディングは、これらの要素だけではなく、戦略の策定からメッセージの伝達までの全体的な取り組みを意味します。
ブランティングの目的と種類
ブランディングの主な目的は、企業や商品やサービスに特別な価値を与え、対象者の心の中に独自の位置を築き想起させることです。
ブランドの認知度を上げ、ロイヤリティを獲得することでブランド価値を高めます。
また、ブランディングの対象とする観点で分類すると、企業ブランディングや製品ブランディングなどに分けることができます。
企業ブランディング
企業の全体的なビジョン、ミッション、価値をステークホルダーに伝え評価や信頼性を高めます。
商品・サービスブランディング
商品・サービスの識別性や評価を高め感情的な結びつきをつくることで、競合との差別化を図ります。
顧客や消費者の信頼を獲得し、長期的なロイヤリティを築くための鍵となります。
学校(教育機関)ブランディング
大学や専門学校などの教育機関が、学生の獲得のために、学校の評価や認知度の向上、卒業生や保護者との関係強化、学校のビジョンやミッションの伝達などを目的として行います。
地域ブランディング
地域や都市、町などを対象として自治体などが行うブランディングは多くの場合、このカテゴリに分類されます。
観光の促進、地域の魅力の活用、地域住民の誇りの醸成、移住の促進などを目的としています。
アウターブランディングとインナーブランディング
ブランディングの対象者で見ると、アウターブランディングとインナーブランディングに分けられます。
アウターブランディングは、顧客や消費者など外部に向けてブランディングすることです。
一方インナーブランディングは、内部のステークホルダー、特に従業員に向けたブランディングです。
組織内で価値観や存在意義、ビジョンなどの理解を深めそれを共有することで、業務に活かすことができるようになります。
その結果、組織の一貫性が保たれ、サービスや製品の品質、顧客との関係などの面でも、一貫したブランド体験を外部に提供できるという見方もできます。
※アウターブランディングはエクスターナルブランディング、インナーブランディングはインターナルブランディングとも呼ばれます。
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ブランディングとマーケティングの関係
マーケティングは、企業の経営戦略の一部として、商品やサービスが売れ続ける仕組みを作る活動全般です。狭義では宣伝や広告活動、販売促進活動などを中心とした活動や手法を指すこともあります。
実は、ブランディングとマーケティングは関連しています。
ブランディングは企業の基盤として機能し、マーケティング戦略の方向性を指し示す役割を果たし、マーケティングは、ブランドのメッセージや価値をターゲット層に伝えます。
また、効果的なマーケティングはブランドをサポートし、強いブランドはマーケティング活動の効果を高めます。
ある意味、ブランディングはマーケティングの上位に位置し、マーケティング活動の方向性を決めるものと捉えることが出来ますので、この二つをバランスよく連動させることは市場での競争力向上につながり、持続的な成功への鍵として考える場合もあります。
ブランディングのメリット
では、ブランディングを活用するとどのような効果がもたらされるのでしょうか。
代表的なメリットをいくつか紹介します。
知名度やロイヤリティの向上
人は、知らないものより知っているものに好意を感じやすくなります。
これは、ザイアンス効果(またはザイオンス効果とも言われる)と呼ばれます。
人がある物や情報に繰り返し接触すると、それに対する好意や安心感を抱く傾向があるとされます。
組織(企業・教育機関など)や、製品・サービスが広く認知され想起されやすくなると、ブランドとして親近感や安心感が生まれ、他に比べて選ばれやすくなります。
また、ストーリーやメッセージが消費者の心に定着することで、信頼を伴った感情移入が強まり、ロイヤリティが向上します。
効果的な広告宣伝
ブランディングがうまくいくとそれが土台となり、一貫した方向で広告宣伝が行え、効果が高まります。
また、長期的かつ継続的な視点でブランディングと広告宣伝を活用すれば、企業や商品のイメージ構築や維持につながります。
ブランディングがしっかりと行われている企業や商品は、その固有の価値やメッセージが明確です。その明確なブランドイメージが土台となり、広告宣伝活動が一貫した方向性を持つことができます。これにより、対象者に対するメッセージが定まり混乱を避けることができ、信頼性や認知度が向上します。
また、ブランディングと広告宣伝は相互に関連しています。ブランディングは長期的な視点で企業や商品の価値やイメージを築くものであり、その結果として広告宣伝活動も効果的に展開できるようになります。逆に、広告宣伝活動を通じて得られたフィードバックや市場の変化を受け入れ、ブランディングの方針を微調整することも考えられます。
したがって、ブランディングと広告宣伝は、企業や商品のイメージを維持・強化するための重要な要素として、密接に連携するべきです。
価格プレミアム
ブランドが確立され、他の選択肢と比較せずに指名されるようになると、競合と比べて価格が少し高くても選ばれやすくなります。これは価格プレミアムと言われ、特定の商品やサービスを思い浮かべるときに感じる安心感や信頼性が、「高い価格でも購入する」という行動につながります。
人材採用や従業員のモチベーション
就職活動においては、高い知名度を持つ企業は明らかに有利です。ブランディングに成功すると、企業の知名度や価値が向上し、それが人材の採用にもプラスとなります。
しかし、ブランディングが表面的なものであれば、従業員が期待していたイメージとのギャップから、モチベーションや貢献意欲が低下する恐れがあります。従って、感情を持つ経営資源である従業員が自らの組織に誇りを感じられるよう、組織の内部からのブランディングに注力する必要があるでしょう。
ブランディングのデメリット
ブランディングの主なデメリットとしては、その活動は長期間に及ぶため、時間とコストが大きくかかることが考えられます。
また、ブランドが顧客の期待を満たせない場合、その評価が低下するリスクがあります。
最後に-ブランディングは大企業のもの?
ブランディング活動には確かにコストやリソースが要りますが、必ずしも大規模なキャンペーンや広告を打ち出す必要はありません。
最も大切なのは、ターゲットと自身を知り、独自性のあるコンセプトをストーリーで伝えるなど、組織の特性や強みをしっかりと理解しそれを最大限に活用することです。
例えば、会社案内や学校案内、ホームページのリニューアルをきっかけにブランディングをはじめるのも一つの方法です。
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このお役立ち記事は、私がこれまでにお客様のプロモーション課題に取り組んできた経験や、お客様からお寄せいただいた質問をもとに執筆しています。印刷をデザインやマーケティングの観点も交えながら、読者の方に少しでも分かりやすくお伝えする事を心掛けています。