
有料老人ホームなど介護施設のパンフレットを制作する際は、発注者(依頼者)もデザインの基本的な考え方を少し理解しておくことが大切です。そうすることで、制作会社(デザイナー)との認識のズレを防ぎ、意図通りのパンフレットを完成させやすくなります。
本記事では、介護施設パンフレットの制作でもっとも重要な要素のひとつである「デザイン」に焦点をあて、発注者が最低限押さえておきたいポイントを解説します。
介護施設(老人ホーム等)のパンフレット制作を依頼する前に、ぜひご一読ください。
本記事は、弊社の考え方やこれまでの制作経験に基づいて執筆しています。必ずしも、すべての制作会社や印刷会社に当てはまるとは限りません。また、本記事における「デザイナー」という表現には、制作に関わるディレクターなどデザイン制作工程に携わる職種を含んでいます。
介護施設パンフレットのデザインが重要な理由
介護施設のパンフレットは、WEBからの資料請求や見学会など「比較・検討の段階」で大きな役割を果たします。
入居を検討する方やご家族は、まずWEBで情報収集し、条件に合う複数の施設からパンフレットを取り寄せることがあります。そして、パンフレットを見ながら比較・検討し、見学など次のステップに進むかどうかを判断します。
つまり、パンフレットは介護施設の検討プロセスを進めるうえで、大切な資料として位置づけられるのです。
では、なぜパンフレットの「デザイン」が重要なのでしょうか。
1.第一印象を決めるデザイン
パンフレットは施設の「顔」とも言える存在です。
あなたも経験があるかもしれませんが、人は、はじめて接したものに対して、最初の数秒で抱いた印象がその後の評価に大きく影響します。そのため、パンフレットを見て「安心できる」「信頼できそう」と感じてもらうことはとても大事なことです。
その印象を形づくる大きな要素がデザインです。
デザイン次第で、第一印象に清潔感や温かみを自然と伝えられ、施設の信頼性やブランドイメージを高め、見学や相談へと進む意欲を後押します。
- デザインの質で 「ここなら安心」と感じる
- 雑然としたレイアウトや安っぽい仕上がりでは、「運営もずさんでは?」と不安を招く
2.魅力を伝え、疑問や不安を解消する
WEBと違い、紙のパンフレットは手元に残り、家族での話し合いや施設比較の場でじっくり読まれる媒体です。だからこそ「情報の整理」と「読みやすさ」が重要になります。
入居を検討する人に必要な情報を分かりやすく示し施設の魅力を正しく伝え、疑問や不安を解消するためには、デザインの力が必要となります。
それにより、入居希望者や家族が抱く疑問や不安を解消し、見学や相談といった次の行動につなげられるのです。
3.WEBで伝えきれない「雰囲気」を伝える
介護施設を選ぶ際は、料金やサービス内容に加えて「ここで安心して暮らせそうか」という雰囲気も大重要な判断材料です。
WEBサイトは手軽に情報収集できる一方で、施設の空気感や雰囲気までは十分に伝わらないことがあります。
もちろん、実際に施設を体感してもらうのが最も確実ですが、そのためにはまず「見学に行ってみたい」と思ってもらう必要があります。そこで、前段階で雰囲気を補う役割を担うのがパンフレットです。
紙ならではの質感や見開きの構成を活かし、「清潔感」「温かみ」といった印象を視覚的に伝えられるのはパンフレットならではの強みです。
そして、その印象を形づくる中心にあるのがデザインなのです。
発注者とデザイナー、双方が知っておくべきこと
1.デザインの知識
もちろん発注者の多くはデザイナーではないので、理解すべきことは、デザインの専門的な技術ではなく基本的な考え方(次項で説明)です。
デザインの基本を知っていれば、そのデザインの意味が理解しやすくなるため、制作会社との意思疎通がスムーズになります。その結果、意図通りのパンフレットを完成させやすくなります。
2.目的やコンセプト(デザインの基準)
さらに、入居検討のプロセスを整理することも大切です。多くの方はまずWEBで情報を集め、次に資料請求でパンフレットを手にし、施設見学を経て契約に進みます。この流れを意識すれば、パンフレットが「資料請求〜見学」の段階で大きな役割を担っていることが明確になります。
つまり、入居契約に至るまでの流れを踏まえて「どの段階の人に、何を伝えるか」を整理し、パンフレットの目的やコンセプトを定めることで、どのような情報を優先すべきか、どんな表現にすべきかといったこと(デザインの基準)が見えてきます。
これも、発注者と制作会社(デザイナー)で共有すべき情報のひとつです。
デザインの共通認識が成果と効率を生む
発注者と制作会社が、デザインの「知識」と「基準」を共通認識として持てれば、施設の魅力を正しく伝えるパンフレットが効率的に制作できます。その結果、成果につながり、手戻りや無駄な工数も減らせます。
ここは押さえておきたい!
介護施設パンフレット デザインのポイント
高齢者本人と家族、双方に配慮する
介護施設のパンフレットは「入居者本人」と「家族」の双方に伝わる内容でなければなりません。入居を決める際には本人の意向だけでなく、家族の判断も大きく影響するからです。本人には「文字の大きさや読みやすさ」、家族には「施設の理念・方針、安全性やスタッフの専門性」といった信頼性に関わる情報を示すことが大切です。双方の視点を意識したデザインによって、入居検討を前に進めやすくなります。
〈色彩〉 第一印象を左右する要素
色は感情や心理に直結するため、パンフレット全体の雰囲気を決める要素となります。
介護施設では、安心や清潔、温かみなどを感じさせる配色が基本になります。
一方で、強い色は目立ちますが、多用すると緊張感や不安感を与える可能性があることを考慮します。
〈文字〉 読みやすさを支える要素
文字は情報伝達の基本であり、可読性の高さがそのまま理解につながります。
文字が小さすぎたり読みにくい形だと、高齢者本人やご家族にとって負担になり情報が伝わりにくくなってしまいます。
見出しは太字や色でメリハリを付けると情報の階層構造を明確になり、読者の理解が促進されます。
〈レイアウト〉 余白を活かし、情報を整理する
レイアウトは、情報をどの順序でどのように視線を誘導するかを決めます。
情報が雑然と並んでいると、重要な内容を把握できない、途中で読むのをやめてしまうなどの事態を招きかねません。視線の流れを考えつつ、余白を適度に取り、写真と文章のバランスを整えることでストレスなく読み進めてもらえるようになります。
〈写真・イラスト〉 雰囲気を伝える
清潔感のある施設内、笑顔で過ごす入居者、親身に対応するスタッフなどの写真は、安心して生活できる印象をあたえます。写真はそのクオリティ次第で、文字以上に「雰囲気」や「信頼感」を直感的に伝えることができます。
プロのカメラマンによる撮影でクオリティを高めれば、パンフレットから感じる信頼も一層高まります。

普段の仕事で使えるデザインの基本を4つご紹介します。資料作成もこの基本を意識するだけで、情報が整理され伝わりやすくなります。
1.コントラスト:強弱をつけ、違いをはっきり見せる
2.整列:要素を揃えて読みやすくする
3.反復:デザイン要素を繰り返して統一感を出す
4.近接(グループ化):関連する情報は近くに配置
デザインを発注する前に準備しておきたいこと
次に、介護施設パンフレット制作を発注する前に、準備しておきたいことについて説明します。
もちろん、すべてを完璧に準備していなくても大丈夫です。制作会社(デザイナー)がプロとして導いてくれるはずです。
ただし、出来るだけ情報を整理して伝えておくと打ち合わせがスムーズになり、意図が反映されたパンフレットに仕上がりやすくなります。
ターゲットや目的を明確にしておく
- 誰が読むのか(高齢者本人?家族?)
- どんな行動を促したいの(見学予約?)
掲載する情報を整理する
次に、パンフレットに盛り込むべき情報を漏れなく洗い出します。
代表的な要素には「施設理念」「サービス内容」「料金」「設備」「スタッフ紹介」などがあります。
パンフレットのページ数などによっても異なりますので、あらかじめ優先度をつけて情報を整理しておくと良いでしょう。
パンフレット掲載内容の例
基本情報 | 施設名、運営法人、所在地、アクセス・最寄り駅、周辺環境、開設年、定員数、連絡先 |
設備・環境 | 居室・共用スペース、外観、安全対策 |
料金体系 | 入居一時金、月額費用の内訳、追加費用 |
サービス | ケア、レクリエーション、リハビリ |
食事 | 食事の内容、調理方法、介護食 |
医療体制 | 協力医療機関、夜間対応 |
職員体制 | 人員配置、看護師やリハビリ専門職の数 |
実績・信頼性 | 認可・指定状況、外部評価、利用者や家族の声 |
入居の流れ | 資料請求、見学、面談、契約、入居までの流れ |
FAQ | 費用、医療対応、面会や外出の可否、入居条件 |
構成やデザインの方向性を考える
構成やデザインの方向性を考えることが難しい場合は、「落ち着いた雰囲気にしたい」というイメージや、参考にしたいパンフレットを見本として準備するなどでもOKです。
写真・原稿を用意する
施設の特徴を伝える原稿や写真素材を準備します。
写真は、施設の清潔感や雰囲気を直感的に伝えるために特に重要です。プロのカメラマンであらたに撮影することもおすすめです。施設の魅力を最大限に引き出すことができます。
掲載する文章を考えるのが難しい場合は、取材を依頼しそれをもとにライターが原稿を作成することも可能です。制作会社に相談してみましょう。
もっと介護施設パンフレットを活かす方法
印刷品質にこだわる
パンフレットは「手に取る」媒体なので、紙質や印刷の仕上がりが第一印象を大きく左右します。
厚みのあるマット紙は落ち着いた印象、光沢紙は写真を鮮やかに見せるなど、素材選びで雰囲気が変わります。施設の「信頼感」「清潔感」を表現するためにも、印刷仕様にはこだわることが大切です。
配布方法をあらかじめ想定しておく
パンフレットやリーフレットは「資料請求で郵送する」「施設見学で渡す」など配布シーンによって最適なサイズや形状が変わることがあります。渡すシーンを想定して仕様を考えるようにしましょう。
つくって終わりにしない
一度作ったパンフレットが完成形ではありません。実際に配布して反応を確かめ、「伝わりにくい部分」「よく聞かれる質問」などを反映しながら改善することで、より効果的なパンフレットに成長していきます。
FAQ—介護施設パンフレット制作でよくある質問
パンフレット制作で、弊社が実際にお客様からご相談いただいたことをいくつか紹介します
介護施設パンフレットでは「派手さ」よりも「安心感・清潔感」が重要です。落ち着いた色やシンプルな構成の方が信頼感につながる傾向があります。なぜ派手にして目立たせたいのか。そこから、いま一度制作会社に相談することをおすすめします。
最近のスマートフォンでも十分きれいに撮れますが、プロが撮影した写真は「光の使い方」や「構図」が違い、パンフレット全体の完成度を大きく高めます。
デザインは、思い描いたイメージを伝えることは本当に難しいです。そのような時はデザインの見本や参考となるもので説明したりすると良いでしょう。もちろん、デザイナーは質問を投げかけながら、依頼者の意に沿いつつも目的を達成できるデザインの完成に向けて進めていきます。
具体的な指示方法や伝え方のコツについては、こちらの記事でも詳しく解説していますので参考にしてください。
【デザインイメージの伝え方】依頼する時のポイント4選
最後に
介護施設のパンフレットは、単なる情報資料ではなく「信頼感」や「安心感」を伝える大切なコミュニケーションツールです。
入居希望者を増やすためには、パンフレットにどのような役割を持たせるのかを明確にし、ターゲットに合わせたデザインと情報整理が欠かせません。また、パンフレットは一度作って終わりではなく、反応を見ながら改善を重ねることで、施設の魅力をより的確に伝える媒体へと成長していきます。
ぜひ、制作の過程を「試行錯誤の機会」と捉えながら、発注者と制作会社が共通認識を持って取り組んでみてください。
パンフレットのことはゼンリンプリンテックスにご相談ください
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このお役立ち記事は、私がこれまでにお客様のプロモーション課題に取り組んできた経験や、お客様からお寄せいただいた質問をもとに執筆しています。印刷をデザインやマーケティングの観点も交えながら、読者の方に少しでも分かりやすくお伝えする事を心掛けています。