- KPIについて基本が知りたい方
- 企業で広報を担当している方
- Webサイトの担当者
「KPIという言葉を聞いたことはあるけれど、その意味はよくわからない」という方も多いかもしれません。
本記事では、営業活動やWebサイト運営など、実際のビジネス現場でKPIを効果的に活用するための基礎知識を分かりやすく解説します。
KPIとは?
KPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)は、最終的な目標(ゴール)の達成を目指す重要なプロセスにおける数値目標、またはその達成度合いを表す指標です。
例えば、Webサイトでは「3月までにセッション数を1.5倍の〇〇にする」、営業組織では「今期中に顧客への提案を〇〇件する」などと設定されます。
このようにKPIは、私たちが普段の業務で目指すべき具体的な目標を示します。
ここで重要なのは、KPIが「目標達成にとって最も重要な項目であるか」、「目標を数値で表しているか」という点です。
KPIは「この数値を達成すれば最終目標が達成できる」という、分かりやすい数値で設定されるべきです。
※KPIを達成しても最終目標が達成できない場合は、KPIの設定に問題があるため、見直しが必要です。
KPIの主な目的は数値管理だけにあるわけではありません。単に数値を追跡するだけではなく、これらの数値が本来の目的に沿っているかを理解し、その理解に基づいて行動を起こすことが重要です。
KPI設定のコツ-KPIはなるべく絞り込む
KPIはなるべく重要なものに絞り込むようにします。
KPIは、目標を達成度合いをはかる先行指標となります。
目標達成に向けて上手く進んでいるのかを見る際、その指標がたくさんあると判断が難しくなります。
ですからKPIは重要な指標の中から必要最小限にするようにします。
上の図では、年間売上1000万円を最終目標(KGI)として、ゴールに向けて必要な要素を分解しています。(KGIについては後述)
このように最終目標(KGI)から、ゴールに向けて必要な要素であるKPIをツリー状に分解し可視化した図を、KPIツリーと言います。
次は、さらに理解を深めるため、KPIと密接な関係にある「KGI」と「CSF」について説明します。
KPIで欠かせない「KGI」と「CSF」
「KGI」と「CSF」について知ることは、KPIを深く理解し本来の目的から逸脱しないためにも必要です。
これらは、目標の設定と達成における進捗を測定する上で、KPIと密接に連動して機能します。
KGIとは
KGI(Key Goal Indicator/重要目標達成指標) は、事業などの最終的なゴールを数値化した指標、すなわち最終的な目標数値ということができます。
※前項「KPIとは」の文中にある“最終的な目標(ゴール)”を数値化したものこそKGIです。
例えば、WebサイトのKGIであれば「お問い合わせ数を〇〇件(現状の2倍)にする」、営業組織なら「売上〇〇〇万円アップ」といった具体的な目標が設定されます。
CSFとは
CSF(Critical Success Factors/重要成功要因) は、KGIを達成するために重要な影響を及ぼす要因を表します。
これは、KGI達成に必要なプロセスの中で特に影響が大きいものを指します。
Webサイトであれば「セッション数」や「コンバージョン率」、営業組織では「提案活動」や「顧客訪問」などが該当します。
ただし、CSFは実行することでKGIが達成できるものでなければなりません。
「KGI」「CSF」「KPI」の関係
KGIは組織が達成したい最終目標を設定し、CSFはその目標達成に必要な重要な要素を特定します。
KPIは、これらの要素の実行と目標達成の進捗を具体的に測定する指標です。
KPIはKGIから逆算して設定されることが多く、組織がどのような中間目標を達成すれば、最終的な目標に到達できるかを示す指針となります。
なぜKPIが必要なのか
KPIが必要な理由
KPIが必要な理由は以下の通りです。
- 進捗の確認
KPIにより、目標達成の進捗を追跡し、計画が予定通りに進んでいるかどうかを確認できます - 行動の明確化
KPIはチームや個々のメンバーに、何を目指すべきかを明確に示します - パフォーマンス向上や意思決定をサポート
定期的なKPIの評価により、改善点が明らかになり、軌道修正や戦略・戦術の変更が可能になります - 組織内のコミュニケーションの促進
個人やチームにとってわかりやすい目標となり貢献度も見えやすくなり、コミュニケーションに促進に役立ちます
Webサイト運営のKPI
Webサイトは継続的な改善が必要
Webサイトは公開後が真のスタートと言われることがあります。
これは、Webサイトがその目的を達成するために継続的な改善が不可欠であることを意味します。
外部要因の影響も受けやすいWebサイトは、PDCAサイクルを効果的に回し、継続的に改善することが求められます。
このプロセスにおいて、適切なKPIの設定は、目的達成に向けた現状の把握と改善のための施策を効果的に導くために重要です。
WebサイトのKPI設定方法
例えば、集客を目的としたWebサイトにおいて、SEO対策やコンテンツの追加は、目標である集客に結びつかなければ意味がありません。
明確なゴールを定め、その達成に向けた優先順位を決めて施策を行う必要があります。
例として、KGIを「年間の成約件数50件」とした場合、KPIには「商談数」や「見込み顧客獲得数」を設定することが考えられます。
また、商談数とサイト訪問数に相関が見られる場合は、「セッション数」もKPIとして有効です。
認知度拡大が目的の場合は、「ページビュー数」や「ユニークユーザ数」が適切なKPIになります。
※Webサイトの目的や状況、社内の体制などを考慮して実現性のあるKPIを設定するようにします。
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営業活動のKPI
戦略と戦術に基づいた営業活動
営業目標が「売上を〇〇〇万円アップする」と設定された場合、営業スタッフがやみくもに顧客を訪問したり、広告を出稿したり、絶えずリファラル(紹介)顧客を追いかけるということは効果的ではないでしょう。
通常、営業組織では戦略としてターゲットや市場のポジショニングを明確にし、目標達成のための計画を策定します。
そして、その戦略に基づいて具体的な戦術を立て、スタッフはこれに従い日々の営業活動を行います。
営業活動のKPI設定方法
KPIは、この戦略と戦術に沿って設定され、達成度を測定することができます。もしKPIが達成されていても目標達成に貢献していない場合、戦術の見直しが必要になるかもしれません。ただやみくもに営業活動を行うだけでは、その効果や効率が不透明になりがちです。したがって、戦略や戦術と併せてKPIを活用することが重要です。
KPIの候補としては、訪問数、新規顧客の獲得数、見積もり提出件数、提案件数、クロージング率などがありますが、これらは戦略、企業、組織、営業活動の方法によって選択されるべきです。
営業スタッフがコントロールでき、数値化できるものをKPIとして設定することをおすすめします。
個々のスタッフは自分の活動が組織の目標達成にどのように貢献しているかを具体的に把握できるからです。
広報活動にKPIを活用する
広報活動を評価する難しさ
広報活動は、社内外を問わずステークホルダーとのコミュニケーションを通じて関係を構築・維持し、企業の持続的な成長をサポートします。また、「企業ブランドの認知向上」「企業イメージの育成」「ファンの育成」「営業支援の効果向上」「採用活動の強化」「従業員満足度の向上(離職率の低下)」などの広報課題は、一時的な活動ではなく、中長期的な視点で取り組む必要があります。しかし、その効果が直接的に見えにくいため、しばしば優先度が下がる傾向にあります(特にBtoB企業において)。
広報部門は営業部門とは異なり、「売上が〇〇〇万円アップした」といった明確な成果を示すことが難しいのが一因でしょう。
例えば、営業部門が新規顧客を獲得したとします。
しかし実際には、その顧客は以前から企業のコーポレートサイトやSNSを通じて製品や会社を認識し、良いイメージを持っていたことが商談のスムーズな進行に寄与している可能性があります。
しかし顧客は通常、「御社のコーポレートサイトを見て信頼できると感じたので決めました」と明言することは少ないです。
そのため、広報活動が売上に貢献していたとしても、その貢献度を具体的に示すことは困難です。
このように、広報担当者は会社の課題解決に貢献しながらも、中長期的かつ定量的に評価する指標がないことによって、もどかしさを感じることがあるようです。
広報活動のKPI設定方法
広報活動におけるKPIとして考慮すべき側面には、コーポレートサイトへの流入数、SNSのエンゲージメント数、社内イベントへの参加率などがあります。
広報活動のKPIを設定する際には、「組織が広報活動を通じて達成したい目的」と「その成功がどのような状態か」を再確認することが重要です。
また、広報活動が課題解決に対して具体的な成果をもたらし、経営層に理解され、広報担当者にとって明確な目標となるようにすることも大切です。適切な数値をKPIとして設定することで、単に報告のための数値ではなく、実際の課題解決に貢献する実用的な数値になります。
近年、広報活動は大企業だけでなく、小規模企業においても重要視されています。実際に、小規模な製造メーカーが広報によって認知度とブランド力を高め、売り上げを大きく向上させた事例もあります。
広報に関連するKPIは、中長期的な経営目標と密接に関連しているため、設定するKPIは企業によって異なります。
まずは実施してみて、課題と現状のギャップを評価し、ゴールに向けて逐次調整するというアプローチも有効です。
A Side Note.広報活動で悩むMさんの体験
ここで、広報現場の現実的な課題が垣間見えるエピソードとしてMさんの体験をご紹介します。
私の大学時代の先輩であるMさんは、地方の企業(製造業)で総務・広報の業務に従事していました。
と言ってもほぼ広報らしい活動は何もしていなかったため、約8年前(2015年頃)、Mさんは「今後、①社会環境の変化に伴い人材採用が困難になる(人事的側面)、②紹介営業のみでは売上維持が難しくなる(営業的側面)」という2つの観点から、以下のような戦略を立案しました。
- 会社および製品のブランド認知とイメージ構築
- 外部ステークホルダーとの関係構築と維持
- インナーブランディングによる従業員満足度向上
Mさんは、コーポレートサイトのリニューアルやコンテンツの充実化、メディアを活用した情報発信、社内広報の活性化をするなどの具体的な施策も盛り込み10年後の会社のあるべき姿を社内でプレゼンしたそうです。
しかし、「今までのやり方でうまくいっている」「今は困っていない」「大企業以外で広報は必要ない」などの理由で、Mさんの提案は周囲から理解されることはありませんでした。
最近でこそ、BtoB企業でも広報に力を入れる企業が増えています。しかし、このエピソードのように社内で理解を得ることが難しい場合もあります。そのような時は、なぜ広報に取り組む必要があるのかを明確にし、あわせて中長期かつ定量的に評価できる指標についても説明すると良いかもしれませんね。
ちなみにMさんは、当時、KPIなど知りもしなかったそうです。
その後Mさんは別の会社に移り、広報担当のリーダーとして働いています。
印刷物とKPI
ダイレクトメールやチラシ、リーフレットなどの印刷物を作成する目的は、通常、特定のプロモーション目標を達成するためです。この目標を効果的に達成するためには、適切なKPIを設定することが重要となります。
例えば、ダイレクトメールを見て資料請求した人の数、イベント来場者数など行動を起こした人の数(割合)をKPIとして設定し、印刷物の内容の改善や施策の見直しにつなげることが出来るでしょう。
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最後に
KPIは、単なる数値目標ではありません。
それは組織の進捗を確認し、戦略や戦術の有効性を評価し、必要な場合には改善を行うための重要なツールです。
Webサイト運営や営業活動、さらには印刷物を用いたプロモーションにおいても、適切なKPIの設定と評価は、目標達成への道を照らし、成功を導く鍵となります。
この記事では、KPIの基本的な概念とその設定方法、そしてKPIと密接に関連するKGIやCSFについて説明しました。
KPIを理解し適切に活用することで、あらゆるビジネス活動の効果を最大化し、組織全体の成長と成功を促進することができます。興味を持った方は、更に詳しい情報を書籍や専門資料で探求してみると良いでしょう。
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このお役立ち記事は、私がこれまでにお客様のプロモーション課題に取り組んできた経験や、お客様からお寄せいただいた質問をもとに執筆しています。印刷をデザインやマーケティングの観点も交えながら、読者の方に少しでも分かりやすくお伝えする事を心掛けています。