【色校正とは何か】色校正の意味や種類による違い・修正指示の方法を解説

色校正とは
この記事は次のような方におすすめします
  • 「印刷の色が思っていたものと違う」経験がある方
  • 色校正とはそもそも何か知りたい方
  • 色校正の修正はどう指示すればいいか分からない方
  • 企業の販売促進・広報のご担当者

あなたは「色校正」という言葉を聞いたことはありますか?
聞いたことがある方は、なぜ色校正が必要なのかご存知でしょうか。
本記事では、印刷物を作る上で重要な工程のひとつである色校正について説明します。

※なお本記事では、「印刷機」は印刷会社が使用するオフセット印刷機、「印刷物」はオフセット印刷機で刷ったものを想定しています。またモニターやカラープリンターは、会社の事務所などで使用されている一般的なものを指しています。

はじめに-ある経営者の失敗

私の知り合いのある経営者の話です。
新しい店舗(美容室)を出店する際に、ポスティングチラシ、ポスター、会員カードを作成することにしました。
デザイナーにブランドカラーやロゴデザインなどのVI (ビジュアルアイデンティティ)策定から印刷物のデザインまでを依頼し、掲載する写真はプロのカメラマンによる撮影を行ったとのこと。

しかし、出来上がった印刷物は、「チラシとポスターで色が異なる」、「写真の色味がイメージと違う」という、トラブルに見舞われました。
なぜこのようなことになったのでしょうか。

その経営者が相談にきたので早速話を聞くことにしました。
そこで分かったの次のようなことでした。

  • 色校正は行っていない
    デザイン事務所のカラープリンターで出力したゲラ(校正用に出力された紙)で見ただけ
  • 印刷の手配はデザイナー任せ
    色校正を行っていない上に、チラシとポスターをそれぞれ別の印刷会社に依頼していた

結局、色校正からやり直すこと(刷り直し)で問題を解決し、予定通り開店することができましたが、後味の悪さが残ってしまったとのことでした。

実は、印刷物の色は一般的なカラープリンターで確認することは難しいのです。
特にこのようにこだわりのある場合では、色校正が必須となります。
このことをこの経営者は知らず、またデザイナーから伝えられていなかったため、このような事態となってしまったのです。

それでは、色校正について詳しく見ていきましょう。

色校正とは

「色校正(いろこうせい)」は校正の種類のひとつ

まずはじめに、「校正」について大まかに理解しておきましょう。
校正には大きく分けて2つにあります。

一つ目は、「文字・デザイン校正」です。
文字・デザイン校正とは、原稿など正しいとするものと作成中の紙面を比べて、印刷物の紙面が正しく出来ているかを確認することを指します。
文字・デザイン校正は、誤植(ミスプリント)や、デザインに関する意図(レイアウトなど)の相違がないかをチェックする重要な工程です。
もちろん、修正が必要な箇所があれば適宜それを指示します。印刷物を作成する上では、この修正指示のことを赤字と呼んでいます。

そしてもう一つが今回のテーマである「色校正(いろこうせい)」です。
色校正では、印刷物の色を確認し、修正があれば赤字として指示を行います。
色校正は、印刷物を刷る際の色の基準を定め、印刷物の色の仕上がりを決める重要な工程と言えます。
また通常、色校正は文字・デザイン校正とは別に、色に特化した校正工程として扱われます。

参考:「校正」でよくある質問

校正と校閲の違いは何?

「校正」は、正とするもの(原稿や前工程の修正指示)と比べ相違がないかを基準として、正誤を判断する照合作業です。
一方「校閲」は、記載されている文章を読み込み、文章として正しいかはもちろん、その内容までチェックすることを指しています。
例えば、校閲では、記載されている文章の内容の矛盾点、事実関係、文章表現の不備などを調査・確認し正していきます。

モニターやカラープリンターでは色の確認が難しい理由

それでは、もしあなたがポスターやチラシ、パンフレットなどの印刷物を作る時、色校正をパソコンのモニターやカラープリンター出力物だけで行ったとしたら、どうなると思いますか?

その場合、印刷物が出来上がってきた時に「モニターで見た色より、沈んだ感じになってしまった」など、その色の違いに驚くことになるかもしれません。

一体それはなぜなのでしょうか?

理由①モニターと印刷物は色再現の方法が違うから

色校正パソコンモニター

パソコンなどのモニターで見えている色は、R(レッド)・G(グリーン)・B(ブルー)で再現されています。
RGBは波長の違う可視光で、反射率で色が認識されるため、「光の三原色」と呼ばれます。
また、光は混ぜると明るい色に近づくので加法混色とも言われています。

一方、印刷物は、「色の三原色」と呼ばれるC(シアン)・M(マゼンタ)・Y(イエロー)に、K(黒・キープレート)のインキを重ねて、さまざまな色を再現します。また、インキが重なるほど光を吸収し、黒に近い色になるため、減法混色と言われています。

【知識】
ちなみに、印刷業界ではCMYKの4色をプロセスカラーと呼んでいます。
プロセスカラー以外の色を「特色」と呼び、主にプロセスカラーだけでは色の再現が難しい場合などに用いられます。

つまり、モニターと印刷物ではそもそも色再現の方法が違うのです
また、印刷物のCMYKとモニターなどのRGBでは、再現できる色の範囲も異なります。
CMYKはRGBより色の再現範囲が狭いため、モニターで見ていた色が、実際の印刷物では沈んだ感じに見えることがあります。
モニターで色を確認して「思っていた色とちがう!」となるのは、このためなのです。

理由②カラープリンターで印刷物の色を再現するのは難しいから

色校正カラープリンター

次に、カラープリンターで出力した物と印刷物の色の違いについて見てみます。

カラープリンターは、インクを紙面に吹き付けるインクジェットプリンターや、トナー(粉)を熱で溶かし紙面に転写させるレーザープリンターなど、家庭や会社などで広く使用されています。
ではそれらのカラープリンターで、実際の印刷データを出力すれば、色は確認できるのしょうか?

残念ながら、印刷に使用するデータをカラープリンターで出力しても、基本的には同じ色にはなりません
なぜなら、印刷する機械・印刷方式・インクの種類や色数・紙など、様々な点で実際の印刷とは条件が異なるからです。

ただし、カラーマッチング(色合わせ)を行うなどすれば、ある程度近づけることは可能です。
しかしながら、印刷機の色に近い安定した発色を保つためには定期的なメンテナンスが必要となります。
手間やコストを考えると、印刷会社以外ではあまり現実的ではないと言えます。

さらに、色の見え方は個人差があり見る環境でも違う

上記の通り、モニターやカラープリンターの色と、印刷物の色には差異があります。
それに加え、照明などの環境や個人の感じ方によっても、色の見え方は異なるのです。
ですから、そのギャップを小さくするために、色を確認する際の照明に気を付けるなどの工夫が必要ですし、なるべく「印刷物の色に近いもの」で確認することが求められます。

つまり、その「印刷物の色に近いもの」として、色校正が用いられているのです。

※色を確認する際の照明:色評価用の照明がベストですが、ない場合は印刷物が使用される場面を想定して、同じような環境で見てみると良い

色校正の種類は?

では、色校正にはどのような種類があるのでしょうか。

色校正は、「本機校正」と「簡易色校正」の2つに分けられます
求める色の品質やコストなどの優先度によって、そのどちらかを選択することになります。

①本機校正

本機校正

本機校正とは、実際に使用する印刷機・印刷用紙・インキで印刷した校正紙で確認する方法で、試し刷りと捉えることができます。
メリットは、最終の印刷物と同じ品質で、色をシビアに確認できることです。
デメリットは、印刷用の版を作り(刷版)、実際に印刷機を稼働させ印刷するので、費用と時間を要することです。

②簡易色校正(DDCP校正)

本機校正に比べて簡易的な色校正としてDDCP校正という方法があります。
DDCPとは、ダイレクトデジタルカラープルーフのことです(プルーフ:英語で校正刷りのこと)。
こちらは実際の印刷機を用いた試し刷りではなく、印刷用のデータを高精度なインクジェット機などの出力機で出力し、それを色校正紙とします。

メリットは、印刷機を稼働させない、印刷用の版も不要なため、本機校正と比べ費用・時間を抑えることができます
デメリットは、簡易校正(DDCP校正)と実際に印刷した時の色に、若干の差異が発生する場合があることです。

※印刷会社では、温度や湿度による色変化への対応や、印刷機と簡易校正(DDCP)の色を近づけるための色調整(カラーマッチング)など、印刷物の色品質向上のために日々取り組んでいますが、仕上がりが心配な場合などには、本機校正をおすすめします。

色校正-修正指示の出し方

修正指示を出す時の注意点

「見える色」は、物体に反射した光の強さを脳内が「色」として変換した結果です。
そのため、色の見え方は誰でも同じというわけではなく個人差があり、またその感じ方や評価も異なるものです。
そのため、色校正の修正指示はより具体的に行わなければなりません。

修正指示のポイント

色校正の修正指示では、まず調整する色を指定し、「濃さ(濃く・薄く)」「明暗(明るく・暗く)」「コントラスト(強く・弱く)」「彩度(鮮やかに・くすませる)」など比較対象を交えて、具体的に指示を出すようにします。

例えば、「顔全体の肌色を、できるかぎり明るく」「目元の赤味を見本よりややおさえる」など、指示の対象となる部分(部位)や、修正する程度を具体的に示すと分かりやすくなります。(修正する程度は「やや→中程度→できるかぎり」など段階を定めておくとよい)

このような指示は慣れていないと難しいものです。
その場合は、頭の中にあるイメージを出来る限り言葉で印刷会社に伝え、印刷会社が言語化した指示を確認するようにして下さい。
また、以前に印刷物を作っている場合は、色の見本として印刷会社に渡すのも手です。

色校正の指示

色校正は必ず必要?

色校正はカラー印刷の場合、色の品質を確保するためには必要ですが、色校正を行わないということも可能です。
その場合は印刷データをそのまま、その印刷会社の基準で印刷することになります。

なお、次のひとつでもあてはまる場合は、色校正を行うことをおすすめします。

  • 大ロットで作成する場合(刷り直しのリスク)
  • 重要なプロモーションのための印刷物
  • 自社のイメージに関わる印刷物
  • 写真の見映えが重要なデザインの印刷物
  • 掛け合わせ(2色以上の色を重ねて別の色を表現すること)やグラデーションを使ったデザインの場合

最後に

会社や商品のイメージカラー、カメラマンが撮影した人物や商品の写真、デザイナーが作ったデザインなどを生かすために、「色」を出来る限り再現することは、印刷における重要な要素のひとつです。
もし印刷物の「色」が気になったら、ぜひ一度、印刷会社に相談してみてください。

この記事を書いた人

このお役立ち記事は、私がこれまでにお客様のプロモーション課題に取り組んできた経験や、お客様からお寄せいただいた質問をもとに執筆しています。印刷をデザインやマーケティングの観点も交えながら、読者の方に少しでも分かりやすくお伝えする事を心掛けています。

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ゼンリンプリンテックスは、常に「お客様にとっての最善は何か」を考えます。
色校正を行った方が良いか…だけでなく、用紙・サイズ・加工方法などもニーズに合わせて最適な内容をご提案しています。

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