
社史や記念誌の制作は、歴史を振り返り、未来への展望を示す重要なプロジェクトです。
しかし、はじめて制作を担当することになった方は、ひとまずは何をすれば良いか、外部パートナーを選ぶうえで何を伝えれば良いかなど不安なことだらけなのではないでしょうか。
もちろん、実際の制作に際しても、十分な準備をしておかないと、時間や予算が大幅に超過してしまうこともあります。
この記事では、打ち合わせ前、制作前など準備段階で必ず押さえておきたいポイントを「5W1H」でまとめました。
- とりあえず「何をすべきか」がわからない
- 打ち合わせまでに「準備しておくこと」がわからない
- 「社内で検討すべきこと」「制作会社に伝えるべきこと」がわからない
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【Why】社史・記念誌を発行する目的は何か?
社史や記念誌を制作する最初のステップは、発行する目的を明確にすることです。
例えば、「50周年だから」という理由だけで発行するのでは、多くの時間と労力をかけて制作することを考えると、非常にもったいないと感じます。
もちろん、歴史の記録として残すのか、社員のモチベーション向上や企業ブランディングに繋げるのかなど、目的によって、内容や構成が大きく変わってきます。
例えば、もし発行の主な目的が社員のモチベーション向上なら、社員の活躍や成功事例を取り上げ、共感を呼ぶような内容にすることが考えられます。
新入社員に配付し、自社の理念を浸透させる、会社のビジョンを共有するなどを目的とする場合もあるはずです。
企業ブランディングを目的とするならば、企業の理念や強みを強調し、ステークホルダーに好印象を与えるようなデザインやコンテンツを心がけるでしょう。
目的を明確にすることは、社史・記念誌制作プロジェクト全体の方向性を定める上で不可欠です。
目的が曖昧なまま制作を進めてしまうと焦点がぼやけ、画一的な内容になってしまい、期待した効果を得られない可能性があります。
社史や記念誌の目的は、内容や構成、デザインの指針となり、それを関係者間で共有しながら制作を進めることで、より効果的で価値のある一冊に仕上げることにつながります。
【Who】誰に伝えたいのか?ターゲットを設定する
社史や記念誌は、社内外の様々なステークホルダーに向けたメッセージとなります。
そのため、従業員、顧客、株主など、「誰に」メッセージを伝えたいのか、そのターゲットを明確にすることが大切です。
さらに、社史・記念誌のターゲットを考えることは、その内容や表現方法を決定する上でも有用です。
ターゲットが社史・記念誌に何を求めているのかを理解し、それに合わせた情報を適当な方法で表現することで、より効果的にメッセージを伝えることができます。
従業員をターゲットとする場合
従業員をターゲットとする場合、社史や記念誌は企業の歴史や文化を共有し、社員のエンゲージメントを高めるためのツールとなります。
従業員が共感できるようなエピソードや、会社の成長に貢献した社員の紹介などを盛り込むことで、社員のモチベーション向上に繋げることができます。また、社史や記念誌を通じて、従業員が会社の一員であるという意識を高め、一体感を醸成することもできます。
外部のステークホルダーをターゲットとする場合
例えば、顧客をターゲットとする場合、社史・記念誌は企業の信頼性やブランドイメージを向上させるためのツールとなります。
企業の歴史や実績、社会貢献活動などを紹介することで、顧客に安心感を与え、長期的な関係を築くことができます。
また、社史や記念誌を通じて、企業の理念やビジョン、ストーリーを伝え、顧客との共感を深めることもできます。
このように、ターゲットを明確にし、それぞれのニーズに合わせた情報を提供することで、より効果的な社史・記念誌を制作することができます。そして、社史・記念誌が単なる記録ではなく、企業とステークホルダーとの関係を強化する貴重なツールとなるでしょう。
ゴールを定めると、社史・記念誌はもっと活きる
このように、社史や記念誌を効果的なものにするために、「なぜ発行するのか(目的)」と「誰に伝えるのか(ターゲット)」をはっきりと決めておくことが重要です。単に周年を迎えたからという理由だけで発行するのではなく、せっかくなら社内のエンゲージメント向上、企業ブランディング、顧客との信頼構築など、具体的な目的を持つことで、価値のある一冊に仕上げたいものです。
ところで、営業活動においては、「前期比150%の売上」といった具体的な数値をゴールとして設定し、その達成に向けたKPI(重要業績指標)を定めながら、必要な行動を明確にし、数値管理を行うことが一般的です。
社史・記念誌の制作も同様です。
単に作成して配付するだけでは、期待した効果を十分に得ることはできません。
まずは「なぜ社史・記念誌を制作するのか」という目的を明確にし、そこからどのような成果を期待するのかを、できる限り具体的なゴールとして設定することをおすすめします。
ゴールを定めることで、関係者の意識が統一され、制作プロセスが円滑に進むだけでなく、より効果的なコンテンツ作成や、配付後の活用方法もより具体的に計画でき、社史・記念誌の価値を最大限に引き出すことができるでしょう。
【What】掲載する内容やデザインの方向性、完成イメージを考える
何を掲載するか
社史や記念誌には、企業の沿革、主要な出来事、経営理念、社員の活躍、社会貢献活動など、企業の魅力を伝える内容が掲載されます。年表や写真、図表、インタビュー記事など、多様な手法を活用することで、読者の興味を引きつけ、理解を深めることができます。
過去の資料が残っていない場合は、当時を知る関係者へのインタビューを実施し、記憶をもとにエピソードを掘り起こす方法があります。
また、社内報や公的な記録、関係団体が保管する資料を調査し、社会背景や業界動向と照らし合わせながら情報を補完することも可能です。ただし、その場合は時間と労力がかかるため、スケジュールや予算を考慮する必要があります。
掲載内容は、目的やターゲットを踏まえて慎重に決定すべきです。何を掲載するかによって、読者の受ける印象や伝わるメッセージが変わる点にも留意することが必要です。
どのようなデザインにするか
社史や記念誌のデザインは、単に見た目を整えるだけでなく、企業のブランドイメージを伝え、読者の印象に残る重要な要素です。
どのようなデザインにするかを決める際には、「参考にしたいもの」や「デザインの雰囲気」を考慮しながら進めると良いでしょう。
他社の社史・記念誌を参考に
インターネット上で公開している他社の社史・記念誌などを参考にして、どのようなデザインがあるかを確認してみましょう。
気に入ったものがあれば、その何が良いのかを箇条書きにしておくと良いでしょう。
自社で過去に発行したものを参考に
自社が過去に社史や記念誌を発行した経験がある場合、それを活用することで、デザインの統一感を持たせることができます。
もちろん、過去のデザインを踏襲するか、それとも刷新するか?を検討することも大切です。
前回は情報量が多すぎて読みづらかったなど、過去のデザインに課題があれば改善点を整理し、今回のデザインに活かすようにします。
デザインの雰囲気を言葉に
デザインの知識がなくても、「どんな雰囲気にしたいか」「どんな印象を与えたいか」を言葉にすることで、制作会社やデザイナーとスムーズにコミュニケーションを取ることができます。
「細かいことはわからないけど、こんな感じがいい」「シンプルで落ち着いた雰囲気がいいけど、地味にはしたくない」「社員の活躍が伝わるような、温かみのあるデザインにしたい」など、まずは思いついたキーワードをどんどん書き出してみましょう。
そこから、具体的なデザインの方向性が見えてきます。
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完成品をイメージする
社史や記念誌を制作する際、デザインや内容だけでなく、「最終的にどのような形で仕上げるのか」も重要なポイントです。完成形を具体的にイメージしながら、ページ数や装丁、綴じ方、加工方法を決めることで、より目的に合った一冊を作ることができます。
ページ数
まず考えたいのがページ数です。社史や記念誌は、掲載する内容や予算によって適切なページ数が異なります。
50ページ以内のコンパクトなものから、200ページ超の大規模なものまで様々です。
表紙
表紙の仕様は、冊子の耐久性や高級感に影響を与えるため、「上製本(ハードカバー)」と「並製本(ソフトカバー)」のどちらにするかを決めます。
綴じ方
無線綴じ、糸かがり、中綴じといった種類があります。ページ数や耐久性、費用面に影響を与えますので、印刷会社と相談することをおすすめします。
表紙加工
完成品のクオリティを高めるために、特殊加工を施すことで、より魅力的な仕上がりにすることができます。
例えば、表紙のPP加工(マットorグロス)や箔押しで高級感を演出することができます。
【When】発行時期とスケジュールの決定
社史や記念誌の制作において、発行時期を明確に設定し、それに合わせたスケジュールを策定することは成功に導く重要な要素のひとつです。
制作スケジュールが曖昧なままだと、進行管理が難しくなり、品質の低下や納期の遅れを招く可能性があります。
特に、周年記念や企業イベントに合わせて発行する場合は、逆算して計画を立てなければなりません。例えば、「創立50周年記念イベントで配付する」と決めた場合、最低でもその1~2週間前には必要です。また、郵送する場合やさまざまなところへ配付の場合などには、数か月前に完成品が必要となります。
主要なマイルストーンの設定
スムーズな制作進行のためには、余裕をもったスケジュール、関係者の役割明確化、定期的な進捗確認がポイントです。
主要なマイルストーンを設定することは、プロジェクトの進捗を把握し、遅延を防ぐことにつながります。
また、企画立案完了、情報収集完了、原稿作成完了、デザイン完成、校正完了、印刷開始、納品など、各工程の節目となる時点をマイルストーンとして設定し、期日を設定するとよいでしょう。
【Where】配付する場面、配付部数を想定する
社史・記念誌の印刷部数をある程度把握しておくことは重要です。これは、全体の予算から印刷費を差し引いた上で、残った予算で外部の制作会社にどのような作業をどれくらい依頼できるかを検討する際に必要となるためです。
配付部数は
- 従業員に配付
従業員数+予備(社内保管用)+新入社員用 - 取引先・ステークホルダーに配付
主要な取引先+業界関係者 - 周年記念イベント用
参加者数+関係者用(上記と重複分は除く) - その他、メディア・公的機関への寄贈
【How】どのように制作するか―社内体制と外部パートナー
社史・記念誌の制作には、社内外の多くの人が関わるため、円滑に進めるための体制構築をおすすめします。
編集委員会、事務局を組織し、各メンバーの役割と責任を明確にします。
また、信頼できる外部の制作パートナーを選ぶことで成功に一歩近づきます。
社史や記念誌の制作方法には、大きく分けて自社制作、外部完全委託、自社と外部パートナー共同制作の3つの選択肢があります。
自社制作は、費用を抑えることができますが、専門知識やスキルを持つ人材が必要です。
外部完全委託は、プロのノウハウを活用できますが、かなりの費用と製作期間が必要となります。
自社と外部パートナー共同制作では、自社のリソースと外部の専門性を組み合わせることができます。
各選択肢のメリット・デメリットを比較検討し、自社の状況に最適な方法を選択しましょう。
関連記事
最後に
社史・記念誌の制作は、企業の歴史や価値を伝え、社内外の関係者とのつながりを深める重要なツールです。
成功させるためには、目的やターゲットを明確にすることからはじめ、デザインや発行部数、配付計画などしっかりと考えることが大切です。
社史・記念誌を通じて、企業のこれまでの歩みを振り返り、未来への展望を伝える機会にしてみてはいかがでしょうか。
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このお役立ち記事は、私がこれまでにお客様のプロモーション課題に取り組んできた経験や、お客様からお寄せいただいた質問をもとに執筆しています。印刷をデザインやマーケティングの観点も交えながら、読者の方に少しでも分かりやすくお伝えする事を心掛けています。