企業にとっての節目や記念すべき日のために発行される記念誌は、その組織の歴史や文化を広く伝え、関心を集めるための重要なツールです。そして記念誌の表紙は、読者が最初に目にする部分でもあるため、それが「読まれる記念誌」となるかを左右します。
本記事では、はじめて記念誌制作を担当する皆様に向けて、記念誌の表紙において大切な、デザインや用紙の選択、印刷加工、製本方法などのポイントについて説明します。
- これから記念誌を制作する広報担当者
- 記念誌担当に選任された方
- はじめての「記念誌」で情報収集中の方
記念誌の表紙-デザインのポイント
表紙のデザインは、記念誌の内容を視覚的に伝える重要な役割を持っています。
企業など組織のアイデンティティや記念誌のテーマに合った色使いに加えて、どのような写真やイラストを使用するかも重要となります。
記念誌を手に取った時に、それを開きたくなるような親近感や、企業など組織としての信頼感が感じられるようなものを心がけます。
さらに、デザインはターゲットとなる読者層に合わせている必要があります。ターゲット読者を念頭に置き、記憶に残るデザインを目指すことも重要です。
※表紙デザインについて:本記事の最後に事例を紹介しています
表紙デザインについて、本記事の最後に事例を紹介しています。
ぜひご覧ください。
記念誌表紙の印刷加工、装丁の工夫
印刷加工で高級感と耐久性を実現する
印刷加工技術の活用により、記念誌の表紙の魅力をさらに引き立てることができます。
例えば、光沢のある仕上がりにする、反対につやを抑える加工(PP加工)、その他にもエンボス、箔押し加工などがあります。
これらの技術により、表紙に立体感や高級感をもたらすことができます。
また、PP加工を施すことで、長期保存に適した記念誌を作成することも可能です。
PP加工は、印刷された紙面にフィルムを圧着してコーティングする技術で、耐久性の向上にも効果的です。
PP加工は表面に光沢を与えることもできますので、カタログの表紙などに活用されています。
当社ゼンリンプリンテックスでは、つや出し、もしくはつやを抑える2種類のPP加工に対応しています。
※当社の主要設備をご覧ください
記念誌のケースもおすすめ
保存性や高級感を高めたい場合は、ケース(外函・そとばこ)もおすすめです。
ケースは本自体を保護し、装飾目的でデザインの個性を加えることも可能です。様々なタイプのケースから適切なものを選ぶために印刷会社と相談すると良いでしょう。
このように、印刷加工と装丁の工夫を施すことで、記念誌全体の品質と印象を向上させることができます。
記念誌タイトルの決め方
次は、記念誌のタイトルについて考えます。
記念誌のタイトルは、記念誌全体のテーマを表し、その企業や組織が伝える物語や精神を反映する「顔」となり、読者の最初の印象を形成します。これは記念誌の重要な要素のひとつと言えます。
そのため、タイトルについても十分に検討すべきですが、無用に奇をてらう必要はありません。企業や組織の歴史や文化、記念誌が持つテーマを簡潔に表現する言葉を選ぶことが求められます。
記念誌のタイトルの例
- 〇〇大学 100年のあゆみ
- toward the future 〇〇〇100年史
- 〇〇株式会社 50周年記念誌
地域の発展と日本の未来のために(サブタイトル)
記念誌の製本方法(綴じ方)
記念誌の製本方法は、その触感や使用感に大きな影響を与えます。
製本とは、印刷された用紙を一冊の本に仕上げる工程のことを指します。
この工程には、用紙を折り、ページを正確に並べ、それらを綴じ合わせ、表紙を取り付けるなどがあります。
製本方法にはおもに二つのタイプがあります。
「並製本」は比較的簡易な製本方法であり、一方「上製本」はより強度が高く、高級感を演出する製本方法です。
並製本(ソフトカバー)
並製本はカタログなどでよく用いられる製本方法です。
通常の使用に耐える強度を持ち、高級な上製本に比べてコストが低いのが特徴です。
このタイプの表紙はソフトカバーと呼ばれ、本文※と同じサイズになります。
主な並製本には、無線綴じがあります。これは、針金や糸を使用せず、接着剤で本の背を固めてページを固定する方法です。ページ数が多い印刷物に適しており、その開きやすさと読みやすさから、カジュアルなタイプの記念誌に使用されます。
中綴じは折った用紙を重ねて中央部分をホッチキス(針金)で綴じる製本方法で、少ないページ数の印刷物や簡易的な記念誌に適しています。この方法では本の背が形成されないため、薄い冊子の場合に用いられます。
※本文(ほんもん/ほんぶん)とは書籍の主となる部分を指します。記念誌の中心となる中身のページと考えてください。
上製本(ハードカバー)
上製本は、耐久性が求められる場合や、高級な装丁を実現したいときに選ばれます。
表紙はハードカバーを使用し、本文よりも少し大きなサイズとなることが一般的です。
上製本は、例えば卒業アルバムのように、長期間の保存にたえる必要があるものに適しています。
また、上製本には、糸でページを綴じる「糸綴じ」や、無線綴じよりも強度の高い「あじろ綴じ」が用いられます。
記念誌の印刷用紙
続いて、記念誌に使用する印刷用紙について、本文と表紙に分けて説明します。
本文の印刷用紙
記念誌の本文に使用される用紙は、その記念誌の目的、デザイン、予算などによって選ばれます。一般的に用いられる用紙の種類には次のようなものがあります。
用紙の表面に光沢のあるコーティングが施されており、カラー写真やイラストの印刷に適しています。色鮮やかな表現が可能です。
表面にはコーティングが施されていますが、光沢が抑えられており、落ち着いた質感で、高級感のある仕上がりになります。
無塗工(表面をコーティングしていない)で自然な風合いが特徴です。文字中心の記念誌に適しています。
コート紙とマットコート紙の使い分け
コート紙とマットコート紙は、どちらも発色の良さが特徴ですが、光沢面において違いがあります。
コート紙は光沢があり、写真やイラストを鮮やかに表現します。一方、マットコート紙は光沢を抑えた加工で、上品な仕上がりを実現し、読みやすさも提供します。
選択にあたっては、求める雰囲気やイメージを考慮し、実際の用紙サンプルで確認すると良いでしょう。
用紙選びは印刷会社と相談し、サンプルを見せてもらいながら決めることをおすすめします。
記念誌の質感を決める要素のひとつですから、十分に検討して後悔のないようにしたいものです。
表紙の印刷用紙
記念誌の表紙は外観から与える印象に影響します。
上製本(ハードカバー)の場合、表紙は芯となる厚めの板紙等に光沢のあるコート紙や布クロスなどを貼り付けることが多いでしょう。
並製本(ソフトカバー)では、表面に光沢があるコート紙、あるいはマット系の用紙のうち、厚めのものを使用することが一般的です。その他にも厚手の用紙がありますので印刷会社の担当者に聞いてみると良いでしょう。
記念誌のサイズ
記念誌のサイズは様々ですが、最も一般的なのはA4判です。
A4サイズは、記念誌だけでなく、多くの印刷物でよく使われるサイズで、その汎用性の高さから広く採用されています。
他にも、コンパクトなB5判、より手軽に楽しめる文庫本サイズ(A6判)の記念誌もありますが一般的ではありません。
判型 | 寸法 | おもな用途 |
---|---|---|
A4判 | 210㎜×297㎜ | 写真集、パンフレット、カタログ、チラシなど |
A5判 | 148㎜×210㎜ | 教科書、専門書など |
A6判 | 105㎜×148㎜ | 文庫本など |
B5判 | 182㎜×257㎜ | 週刊誌など |
B6判 | 128㎜×182㎜ | 単行本など |
【事例紹介】記念誌の表紙
ご参考に社史の事例も紹介します。
記念誌の表紙のまとめ
記念誌の制作において、表紙のデザインは最も重要な要素の一つです。
このデザインが記念誌の「顔」となり、読者に最初の印象を与えるため、内容を視覚的に伝え、読者の関心をひきつける役割を担います。デザインは、企業のアイデンティティや記念誌のテーマを色使い、写真、イラストを通じて表現され、記念誌が手に取られるかどうかを大きく左右します。
そして、印刷用紙の選択、製本方法、サイズも記念誌の質感や耐久性に影響します。
用紙には、コート紙、マットコート紙、上質紙が一般的に用いられます。製本には、簡易的な並製本から強度と高級感を兼ね備えた上製本まであり、記念誌のサイズはA4判が一般的です。
これらの要素を適切に組み合わせることで、目的に沿った魅力的な記念誌に近づけるのではないでしょうか。
本記事が皆さまのお役に立てば幸いです。
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社史・記念誌に関する記事
このお役立ち記事は、私がこれまでにお客様のプロモーション課題に取り組んできた経験や、お客様からお寄せいただいた質問をもとに執筆しています。印刷をデザインやマーケティングの観点も交えながら、読者の方に少しでも分かりやすくお伝えする事を心掛けています。