- カタログ作成のご担当者
- デザインをデザイナーまかせにしたくない方
- よりよいカタログのためにデザインの基礎知識が知りたい方
ある時、お客様から「カタログのデザインを改善したい」とご相談をいただきました。
このお客様は、多くの商品情報をカタログ紙面の決められた場所に、正確な内容で掲載することを最優先とする中で、デザインを変えたいと思いつつもなかなか手が出ずに何年も経過してしまったそうです。
このような、カタログのデザインを課題として抱える方におすすめしたいのは、まずはカタログデザインの基礎知識をお持ちいただくことです。
担当者の方と制作会社が共通の認識の下でカタログを作ることは、効率と品質向上などに役立つからです。
この記事では、カタログデザインに関する基礎知識やポイントについて説明しますのでぜひご活用ください。
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カタログの役割とカタログデザインの重要性
カタログの役割
カタログには、自社が取り扱う商品や製品を一覧として網羅的に分かりやすく見せ、仕様や機能を比較しやすくするという役割があります。そのため、カタログのページ数が増えるほど、デザインの工夫で情報の見せ方を効果的にする必要があります。
カタログには製品の仕様や価格などの具体的な情報を多く含みます。掲載された商品の情報は、伝わりやすく・探しやすくなければなりません。
カタログデザインの重要性
またその一方で、ブランドのイメージやメッセージを一貫して表現することが求められます。これを実現するために一端を担うのがデザインです。
カタログデザインは、商品やサービスの魅力を伝えるための不可欠な要素であり、ターゲット層のニーズや関心に応えるように工夫が必要です。
デザインによって、カタログの機能性を損ねることがないよう見やすさに配慮しながら、単に情報を伝えるだけでなく感情や価値観に訴えかければ、カタログを見た人の行動に影響を与えることができるでしょう。
カタログデザインを依頼する際にすべきこと
カタログのデザインを依頼する時は、デザイン制作に必要な情報を整理して伝える必要があります。
なぜなら、デザインは制作する目的やターゲットユーザー、イメージなどを十分に把握して作ることが大切だからです。
もし、何の情報も提供しなければ、デザイナーは「たぶんこんな感じ」という想像でデザインを作ることになってしまいます。
また、整理した情報をデザイナーと共有すれば、両者(依頼者とデザイナー)の共通認識としてそれを据えることができます。
デザイナーはより根拠のあるデザインを提供でき、依頼者はデザイナーの意図やデザインの根拠を理解しやすくなるでしょう。
では、デザイナーに伝えるべきこと、あるいは共通認識として持っておきたいことには、どのようなことがあるのでしょうか。
カタログのデザインの効果的な依頼方法
カタログを発行する目的やターゲット層を伝える
商品やサービスの魅力を伝えて購買意欲を高めるには、カタログ発行の目的やターゲット層のニーズ・関心に合わせたデザインが必要です。
定期的にカタログを発行しているような場合では、「わかっているはず」と思い込み、カタログの目的やターゲット層について言及しないことがしばしば見受けられます。
しかしそれではいつの間にか方向性がずれてしまっていたり、最新の市場動向や顧客ニーズについて検討する機会を失う可能性があります。
やはり制作会社との初回ミーティングなどの場で、カタログの目的やターゲット層について言葉として毎回きちんと伝え、あらためて意見を交わすことをおすすめします。
カタログ発行の背景や具体的な理由も共有することで、デザイナーはより深い理解を得ることができるでしょう。
デザイナーに目的・ターゲット層を明確に伝えることは、カタログのコンセプトやレイアウト、配色、書体などのデザイン要素を適切に決めることにつながります。
その他伝えるべきこと
その他にデザイナーに伝えておくべき項目には次のようなものがあります。
- カタログの仕様(サイズ、ページ数、綴じ方法、紙の種類、印刷加工など)
- 配色や使用する書体等について記したガイドライン
- 希望するデザインやイメージ
参考にしたい他社のカタログや過去のカタログを例として挙げることで、具体的なイメージの伝達が容易になります - カタログ全体がわかる構成資料
- 他社との差別化ポイント
もちろんこれらがすべてではありませんので、制作会社とコミュニケーションを取りながら、求められた情報を提供すると良いでしょう。制作会社との継続的なコミュニケーションを通じて、新たに必要となる情報を共有し合うことが成功の鍵となります。
カタログデザイン、5つのポイント
1.まずはカタログのコンセプトを明確にする
カタログのデザインは主にターゲット層に情報を伝え、時には心に残る手段となりますが、必ずしも美しいデザインや先進的なデザインが求められているわけではありません。
カタログのデザインの目的は、ターゲット層に情報を伝えて行動を起こしてもらうことですから、自分の価値観や好みを前面に押し出したものではなく、あくまで読み手を中心に考えるべきです。
例えば、シニア層に向けた高級ギフトのカタログと、30代~40代女性向けの日常的なプチギフトカタログでは、デザインは異なるはずです。
カタログの目的やターゲット層などの情報を明確にしていないと、好みだけでデザインを評価してしまうことになりますので、コンセプトを策定しておくべきです。
カタログのコンセプトは、カタログ全体に貫かれるべき方針、骨格となるものと考えてください。
そのカタログがターゲットとする顧客に対してどのような印象やメッセージを伝えたいのか、どのような価値を提供しようとしているのかを明確にします。
コンセプトの要素には、ターゲット層に関すること、デザインに関する要素、伝えたいメッセージや価値、ストーリーなどがあります。コンセプトはデザインを制作する上で重要です。カタログの目的やターゲット層、商品やサービスの特徴などを表現するための基本的な考え方とも言えます。
ところで、これから説明する配色や書体などについて、トーン&マナー※の設定がある場合はそれに従うべきか、事前に確認する必要があります。
ではさらに、カタログデザインのポイントをいくつかご紹介していきます。
- トーン&マナー
デザインやメッセージなどの一貫性、統一感を保つためのルールや方法。れらはブランドの個性や価値観を一貫して伝えるために重要です。ブランドガイドラインに含まれることが多く、デザイン制作において指針となります。
2.効果的な配色
デザインの印象を決める重要な要素のひとつは配色です。配色とは、カタログで使用する色の組み合わせやバランスのことです。
配色はコンセプトに合わせて選ぶことで、カタログの印象やメッセージを強化し、読者の興味を引くのに役立ちます。
カタログの配色はコンセプトをもとにしてデザイナーと相談して決めると良いでしょう。
3.読みやすいカタログに-書体・文字の大きさ・行送り
情報を効果的に伝達するためには、文章の読みやすさと視認性を高めることが重要です。特に文字量が多いカタログにおいては、その工夫が不可欠です。
(1)書体の選択
使用する書体によって紙面の印象も変わってきます。
文字量が多いカタログでは、シンプルで読みやすい書体の選択が推奨されます。
クセが強い書体を使用すると、一つひとつの文字がバラバラに見えてしまい大変読みにくくなる場合があります。
また、書体をいくつも使用すると、ごちゃごちゃして全体的に統一感を欠いたデザインになってしまいます。
(2)文字の大きさ
カタログ本文の文字は、一般的に8~9pt程度が多いのですが、ターゲット層の年齢によって変わりますので、それを考慮して読みやすい文字サイズを選定しましょう。
また、書体によってはあまり小さすぎる文字は印刷した時につぶれてしまう場合がありますので注意が必要です。
(3)行間の幅と行の長さ
行と行の間(行間)の幅が狭すぎたり広すぎたりすると、バランスを欠いた印象を受けます。
実際に文章を読んでみると、行間が狭い場合は、どこを文字を目で追っているのかが分かりにくく感じるでしょう。
行間が広すぎると、行同士がバラバラに見え、読み進める際の目の移動がスムーズではなくなります。
また、行の長さ(行長)、つまり一行当たりの文字数も読みやすさを左右する要素のひとつです。
読みやすい行の長さは、適度に目を動かして読めるように設定すべきですが、行間の幅とのバランスも加味すると良いでしょう。
4.レイアウト
カタログのレイアウトは、簡単に言うと「文字や写真などを紙面上のどこに、どのように配置するか」ということです。
多くの情報が掲載されるカタログでは、情報が伝わりやすいレイアウトを考える必要があります。
ここではカタログのレイアウトを考える際に重要なポイントをいくつかご紹介します。
(1)揃える
文字や写真の位置を揃える、書体を揃える、色を揃えるなどデザインにおいて「揃えること」は一貫性をもたらしますし、レイアウトの基本でもあります。紙面上で不揃いな部分があると、読み手は違和感を覚え、掲載情報をうまく受け取れなくなる可能性があります。
文字や写真の配置を揃える際は、通常ガイドラインやグリッド(格子状の線、実際には印刷されない)など補助線を使用します。
これにより、すっきりと見やすく整理された情報の流れが生まれます。
(2)まとまりを作る
視覚的に近接しているものは「まとまり」として認識され、グループとして捉えられます。
このことを意識し、紙面上でも同じ要素のまとまり(グループ)をつくり、別の要素とは余白などで区切ります。
そうすると、要素ごとに整理された正しい情報が伝わるようになります。
これはゲシュタルトの法則と呼ばれています。人は近くにあるものや似ているものを「まとまり」としてみなすというものです。
ゲシュタルトと言えば、ゲシュタルト崩壊という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
ゲシュタルト崩壊は文字や図形を部分的に(バラバラに)しか認識できず全体として認知できない状態です。
例えば、同じ漢字をじっと見つめると、一つの漢字として見えなくなってくることがありませんか?これは漢字という「まとまり」を失ってしまったために起こるそうです。
(3)繰り返す
大量の商品が掲載されるカタログのように、同じようなまとまり(グループ)が繰り返し紙面に掲載される場合は、一定のルールに基づいて商品を配置することで、視覚的な規則性が生まれます。
紙面に規則性が生まれ、紙面を見た瞬間におおよその紙面内容が伝わるようになるため、読み手は理解しやすくなります。
(4)強弱をつける
文字の大きさの大小、色のコントラスト、紙面の余白(ホワイトスペース)を効果的に利用することで紙面にメリハリをつけ、読み手の注意を引きつけることができます。
主に見出しと本文の文字サイズの比率をジャンプ率などと言うこともあります。
例えば、ジャンプ率が高いと躍動的に、ジャンプ率が低いと落ち着いて高級感のあるデザインになります。
(5)余白を活用する
デザイナーは、紙面で余白をどうとるかを意識し、デザインのバランスを考慮します。余白の使い方で、紙面に強弱をつけたり要素のまとまりをつくったりすることができるからです。
また、文字や写真を配置するエリアの広さと余白の広さの割合によって、紙面から受ける印象が変わります。
高級感を出したい場合は余白を広めにとるなど、余白の使い方で紙面の印象を変えることができます。
5.ユニバーサルデザイン(UD)を考慮する
高齢者の読者が多い場合は、文章を読みやすくするために、文字の大きさへの配慮や書体の選択、配色を考慮するなどの配慮が必要でしょう。
もちろんこれは高齢者だけに言えることではありません。すべての人にとって読みやすいということは重要な要素です。
印刷物などで、情報がより多くの方に伝わるように配慮するためのデザイン手法を、メディアユニバーサルデザインと呼びます。
メディアユニバーサルデザインは、「ユニバーサルデザイン」の考えに基づいています。
ユニバーサルデザイン(UD)とは
「ユニバーサル」は、「普遍的な」「すべてに共通の」などという意味ですので、ユニバーサルデザインは、「すべての人のためのデザイン」という意味になります。
年齢や障がいの有無などに関わらず、最初からできる限り誰もが利用可能になるようにデザインする考え方です。この場合のデザインは、カタログなどのグラフィックデザインだけでなく、製品や建物のデザイン、構造まで広く含みます。
ユニバーサルデザインの考え方は、1980年代のアメリカで、自身も車いすを使用していたロナルド・メイス教授(建築家・工業デザイナー)によって提唱されました。ユニバーサルデザインには、「必ずこの方法でなければならない」という固定的な正解は存在しません。それを使用するユーザーの視点や立場に立ってデザインすることで、日々の生活を向上させることができます。
ユニバーサルデザインの中で最も有名な例の一つは、シャンプーとコンディショナーの容器に付けられた突起です。この突起によって、触っただけで製品を区別できるようになり、視覚に障害のある方への配慮がなされています。また、これは洗髪時に目を閉じた状態でも役立ちます。
バリアフリーとユニバーサルデザインの違い
バリアフリーは「特定の誰かのために、現状の障壁や障害物を取り除く」という、後から改善アプローチを指すことが多いです。
一方でユニバーサルデザインは、「初期段階(開発や制作のはじめ)から、できる限りすべての人にとって使いやすいものを作る」という考え方に基づいています。
おわりに
この記事では、カタログ制作における効果的なデザインとその基本について掘り下げました。
カタログのデザインは、単に美しいビジュアルを作成するだけでなく、それはターゲット層に情報を伝え、行動を促すための重要な要素です。カタログのコンセプト、配色、書体、レイアウト、そしてユニバーサルデザインなど、これらの要素を組み合わせることで、効果的で使いやすく、目を引くカタログを作成することが可能になります。
カタログ制作は良いパートナー選びが大切です。この記事があなたのお役に立てば幸いです。
よりよいカタログ制作のための制作会社選びについて、こちらの記事をご覧ください。
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このお役立ち記事は、私がこれまでにお客様のプロモーション課題に取り組んできた経験や、お客様からお寄せいただいた質問をもとに執筆しています。印刷をデザインやマーケティングの観点も交えながら、読者の方に少しでも分かりやすくお伝えする事を心掛けています。